【10月14日 AFP】南アフリカ・ケープタウン(Cape Town)のブロンボス洞窟(Blombos Cave)で、原始的な顔料が詰まった2枚の貝殻を発掘したとの論文が、14日の米科学誌サイエンス(Science)に発表された。研究者らは、この場所は10万年前には工房だったと見ている。

 南ア・ウィトウォーターズランド大(University of the Witwatersrand)などの研究チームによると、アワビの貝殻2枚に詰まった粘土には、黄色や赤色の顔料になる黄土(酸化鉄)が含まれていた。貝殻の近くではさまざまな道具も見つかっており、これらの道具で黄土を薄く削り取って他の化合物と混ぜ、絵の具を作っていた可能性がある。

 石器時代のアーチストたちは、平らな珪岩(けいがん)の上で黄土の塊をこすり、赤い粉末を作っていたと考えられる。黄土の小片は石英を使って砕きつぶし、砕いた動物の骨や炭、石片、液体と混ぜ合わせた。そうして出来上がった絵の具を貝殻に移し「やさしくかき混ぜ」たのではないかという。かき混ぜる時や絵の具を貝殻から出す時は、骨が使われたとみられる。

 絵の具は、絵を描くほか、体の装飾にも使われたようだという。

■石器時代には化学の知識を持っていた

 研究チームは、光刺激発光(OSL)年代測定法により、貝殻が発見された石英の堆積層を10万年前のものと断定した。一帯にはその他の考古学的遺物がないことから、この場所は主に工房として使用され、絵の具が完成してすぐに使用されなくなったのではないかと推測している。

 今回の発見は、当時の人類が多少なりとも基礎的な化学知識を身につけ、その目的が儀式用か装飾用か、または身体保護かは不明ながら、将来に備えて計画的に絵の具を保管する能力をも備えていたことを示している。(c)AFP