【10月11日 AFP】中国で最も高いビルの1つが、同国で「最も裕福な村」、江蘇省の華西(Huaxi)村にオープンした。当局者や国営メディアが10日報じた。中国の猛烈な経済成長を象徴する建物だ。

 華西村当局者によると、この高層ホテル「華西竜希国際大酒店(Longxi International Hotel)」は高さ328メートルで、総工費は4億7000万ドル(約360億円)。同ホテルよりも高いビルは中国に10程度しかない。しかも、世界3位の高さを誇る「上海環球金融中心(Shanghai World Financial Center)」など、それらはすべて大都市にある。

■村人が出資する「社会主義モデル」

 華西村は、現在も「村」区分だが、近年めざましい発展を遂げている。周囲の村々を飲み込み、1960年代に1600人だった住民は、いまや5万人になった。

 かつては貧しい農村だった華西は、過去30年の中国の経済改革の中で急速に成長した。

「社会主義のモデル村」と呼ばれる華西村。現在の富は住民から集めた基金が元手となり、鉄工業や繊維業で村人は大金持ちになった。家庭の収入の大半は強制的に新たなプロジェクトに投資され、さらに多くの収入を得るというサイクルが続いてきた。

 華西村の事業を管理する企業、華西グループ(Huaxi Group)の株主2000人は、全員村の住人だ。株主は村民しかなれず、同社で働いていても村民でなければ認められない。

 AFPの取材に応じたある高官によると、中国政府は「華西の経験を学べ」と、全国規模で同村の成功を宣伝しているという。

■高層ホテル、住民200世帯が1億円ずつ出資

 中国の国営英字紙チャイナ・デーリー(China Daily)によると、74階建ての5つ星ホテル、華西竜希国際大酒店の株主は200世帯。各世帯が資本金に1000万元(約1億2000万円)を出資した。

 ホテルの宿泊客は、村内に立地する多様な産業に携わるビジネスマンや、華西モデルを学びにきた政府当局者、同地域を訪れた観光客などが見込まれる。ビル内には回転レストランや屋上プール、ショッピングモール、映画館、スパもある。それに60階には1トンの金塊で作った「金のウシ」が展示されている。

 同村のZhou Li共産党副書記は、「ビルは集産主義の象徴だ」と同紙に語った。だが一方で、同村の「社会主義」という看板を批判し、むしろ共産主義国家内の資本主義の象徴だとの声も上がっている。(c)AFP