【9月15日 AFP】自動車組み立て工場に、発電用の風車や太陽光パネルを併設する動きが急速に広がっている。メーカー各社が、自動車本体だけでなく、生産ライン全体を通じて二酸化炭素(CO2)排出量の削減に取り組んでいるためだ。

 中でも、国として原子力発電からの脱却を選んだドイツでは、自動車メーカーが再生可能エネルギー市場の牽引役となっているようだ。

■ 独自動車メーカーの動き

 BMWは、第64回フランクフルトモーターショー(IAAInternationale Automobil-Ausstellung)で発表した電気自動車(EV)「i3」とプラグインハイブリッド車「i8」を生産するライプチヒ(Leipzig)工場に風車を導入して、2013年から生産ラインを風力発電で稼動させる計画を決定した。

 欧州最大手のフォルクスワーゲン(VolkswagenVW)も、オーストリア電力大手フェアブント(Verbund)と提携し、BMWと同じく13年から独国内12工場で使用する電力の10%を水力発電でまかなうと発表。さらに前月の報道によれば、今後の2年間で再生可能エネルギーに数十億ユーロを投資するほか、北海(North Sea)の洋上ウインドファーム(風力発電基地)の買収を近く発表する見通しだという。

 アウディ(Audi)は、風力発電で作った電気を電気分解して水素を生成し、これを元に天然ガスと同じ化学組成をもったメタンガス(eガス)を合成して、内燃エンジンの燃料にする「eガスプロジェクト」を進めている。こちらも13年からeガス用エンジン製造を始める予定だ。

 仏ルノー(Renault)も、風力発電で稼動し、暖房などの熱源にはバイオマスエネルギーを用い、工場の産業廃棄物を再利用する「ゼロ・エミッション」工場をモロッコのタンジェ(Tangiers)に設立、企業イメージと経済面の双方で有益な投資となった。仏国内の工場でも、12年から太陽光パネルを導入する計画を表明している。

■蓄電技術の開発がカギ

 一方、各自動車メーカーは再生可能エネルギー利用について、あくまでもエコカー研究開発に付随するものと位置づけており、新エネルギーの蓄電などの課題は各国政府が解決すべき問題と捉えている。

 化石燃料や原子力発電と異なり、風力や太陽光発電は需要の増減に合わせて発電量を調整することができない上、天候にも左右されることから、蓄電技術の開発は急務だ。アウディのeガスプロジェクト責任者は、現状では余ったエネルギーは「安く売るか、捨てるほかない」と話している。(c)AFP/Etienne Balmer