【9月13日 AFP】40億年前に地球に隕石(いんせき)群が衝突していなければ、文明の隆盛と衰退をもたらした「金(ゴールド)」が、人の目に触れることは決してなかったとの研究が、8日の英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された。

 その隕石群衝突の2億年前、地球は惑星形成のまっただ中にあった。惑星サイズの天体との衝突で火がつき、地球は溶融した鉱物の塊となった。

 この太古の衝突がおそらく月を投げ出し、衝突で生み出された数十億トンもの液体状の金や白金が、地表を4メートルの厚さで覆った。金や白金はやがて地球の中心に沈んで行き、コアを形成した。

 そこに貴金属は眠っている。人の手が届くよりもはるか深くに。

■なぜ地殻やマントルに金があるのか

 こういったことはこれまでにも知られていた。長らくの謎は、地球の表面を覆う地殻とその下のマントルに、なぜ少なからぬ量の金が残されているかということだった。

 事実、地球が溶融した鉱物の塊だった時期の後に貴金属加えられていないとすれば、ケイ酸塩で構成される地球のマントルには、あるべき量の数十倍、もしかしたら数千倍もの貴金属が存在していることになる。

 そのため、金や、その他の貴金属が、地球が冷却化して少なくとも一部が固形化した後に、宇宙から持ち込まれたものだとの理論が持ち上がった。

 ただ、これまでは理論段階にすぎなかった。

■タングステンの同位体組成から謎を解明

 この理論を実証するため、英ブリストル大学(University of Bristol)のマティアス・ウィルボルド(Matthias Willbold)氏率いる3人の研究チームは、地球のコア形成の後かつ、隕石群の衝突の前に形成されたグリーンランドの岩石を分析した。

 研究チームは最新技術を使い、岩石内のタングステンの同位体組成を測定。タングステンは非常に貴重な金属で、金やほかの重貴金属と同じく、地球のコアの形成にともなって地球の中心部に引き寄せられた。

 化学的組成が同じで、中性子の数が異なる原子を「同位体」と呼ぶ。中性子数が異なるため、同位体は質量に差がある。このわずかな違いで、鉱物の由来と古さが分かる。

 研究チームは、グリーンランドの岩石内のタングステンについて、同位体「182W」の量が、地球上のほかの岩石と100万分の15異なることを突き止めた。この違いは、大量の金が太古の偶然の隕石群衝突によってもたらされたとする理論と一致する。

 ウィルボルド氏は「われわれの研究により、経済活動や多くの産業プロセスが基盤としている貴金属の大半が、200億トンの隕石の地球直撃という、幸運な偶然でもたらされたことが示された」と述べた。(c)AFP