【9月5日 AFP】フランスの大物政治家、ジャック・シラク(Jacques Chirac)前大統領(78)のパリ市長時代の公金横領疑惑をめぐる公判が5日始まる。

 この裁判は、パリ市長を18年、仏首相を2期、仏大統領を2期12年、仏政界の王道を半世紀にわたって闊歩し、2007年に政界を引退したド・ゴール主義者の栄光に包まれた引退生活に、汚名を刻む一撃となりそうだ。

 シラク氏はパリ市長時代(1977~95年)に市の人件費を、実際には自らが率いる右派政党の職員の給与支払いにあてていたとして、公金横領の罪に問われている。シラク市政に関する捜査は99年、汚職や違法な政治資金、証拠隠滅などに関する情報提供を受けて開始され、同氏の後年のキャリアに影を落とした。それでも同氏は、国家元首としての免責特権を失った後も長年、訴追の手を逃れていた。

 しかし、今ついに過去がシラク氏の前に立ちふさがった。

 ただ、5日の公判にシラク氏本人が出廷するかどうかは定かでない。シラク氏の弁護人は、同氏の精神状態が裁判を受けるに適さないとする診断書を裁判所に提出しており、裁判長が当日、判断を示すと見られている。

■現在も世論調査で「好きな政治家」

 政界から身を退いたシラク氏は、地球温暖化や貧困と闘う基金の理事として、優雅な半引退生活を送っていたが、仏国民の間では今でも「好きな政治家」に挙げられるなど高い人気を誇っている。政策を二転三転させることも少なくなかったが、多くの国民の記憶に残っているのは、イラク戦争開戦時、米国に決然と異を唱えた指導者としての姿だろう。

 後継者のニコラ・サルコジ(Nicolas Sarkozy)大統領の無骨さと比べ、シラク氏の穏和な物腰や美食家ぶり、昔かたぎの政治流儀を懐かしむ声もある。

 しかし、シラク氏が法廷の被告席に着く姿を見ても、フランスの世論はほとんど驚かないだろう。

 パリ市長時代のシラク氏とベルナデット(Bernadette Chirac)夫人の浪費や汚職をめぐる疑惑は、この10年ほどメディアでささやかれ続けているし、人気の風刺番組では超人ならぬ「超嘘つき」として、ジョークのネタにされている。ある寸劇では、紙幣の海をかき分け、法律を嘲り、納税者の税金で上流生活を送る高齢のギャングスタ・ラッパーとしてシラク夫妻が描かれていた。

 09年にシラク氏は全編500ページの自伝を出版し、田舎町コレーズ(Correze)での幼少時代から、仏第5共和政の大統領にまで上り詰めた軌跡を振り返っている。その中で、権力を追い求める日々の中では子どもたちと過ごす時間がないに等しかったと告白している。(c)AFP