【9月3日 AFP】リビアの最高指導者ムアマル・カダフィ(Moamer Kadhafi)大佐の息子ハンニバル(Hannibal Kadhafi)氏夫妻に乳母として雇われていたエチオピア人女性が1日、ハンニバル氏の妻に殴られたり、やけどさせられるなど激しい虐待を受けたと病床から訴えた。

 このエチオピア人女性は、30歳のシュウェイガ・ムラー(Shweyga Mullah)さん。現在首都トリポリ(Tripoli)の病院に入院しているムラーさんは、停電している病床でベッドに横たわったまま取材に答え、ハンニバル氏の妻でレバノン人の元下着モデル、アリーン・スカフ(Aline Skaf)夫人に熱湯を2回かけられ、度数3の大やけどを負ったと述べた。やけどは頭皮から顔、胸部まで皮膚の面積全体の約4割に至っている。アリーン夫人による虐待は以前から長期間続いており、殴打は日常的だった。「大勢の護衛がいて、逃げられなかった」と言う。

 重傷のムラーさんに代わり担当のSalah Errmih医師が、エチオピアの首都アディスアベバ(Addis Ababa)のリビア大使館で職を見つけたことから、トリポリ近郊にある流行の先端のビーチリゾートでの事件までを説明した。「子どもたちの服の準備をめぐってトラブルになり、こんな目に遭ったそうです」と言う医師に、ムラーさんはうなづいた。治るまでに数年はかかるという。

 3か月前に別の病院に、護衛の1人がムラーさんを連れて行き、医師たちに「治療して、何も言わないよう」命じたという。しかし、その時の治療は応急処置だけだった。現在ムラーさんを治療している専門医の1人は「想像できる限りあらゆる種類の合併症を引き起こしていた。深いやけども広い範囲にあったが、放置されていた」と語った。

 Errmih医師を通じ、ムラーさんは「彼女(スカフ夫人)は法の下で裁かれてほしい」と述べた。

 ハンニバル氏とアリーン夫人の夫妻は、夫人が妊娠していた2008年に、スイスのジュネーブ(Geneva)のホテルで従業員に乱暴した容疑で一時的に身柄を拘束され、リビアとスイスの外交問題に発展したことがある。

 アルジェリア政府は前週27日、ハンニバル氏がカダフィ大佐の夫人らと共に、国境を越えてアルジェリアに逃れたと発表している。スカフ夫人と2人の子どもたちも同行しているとみられている。(c)AFP