【8月26日 AFP】(一部更新)若い頃にナチズムに傾倒していた事実を認めているスウェーデン家具大手イケア(IKEA)の創業者イングバル・カンプラード(Ingvar Kamprad)氏(85)が、現在もファシスト運動に深い関心を寄せていると指摘する伝記が今週発売され、波紋が広がっている。

 第二次世界大戦中、スウェーデンは中立政策を取っていたが、カンプラード氏は当時ナチスの青年組織とつながりがあったことを1990年代に告白。「人生で最大の過ち」で「若気の至り」だったと述懐していた。

 だが、ジャーナリストのエリザベト・アースブリンク(Elisabeth Aasbrink)氏が執筆した伝記には、前年の取材時に、スウェーデンのファシズム運動指導者の故ペル・エングタール(Per Engdahl)氏を崇拝する発言をカンプラード氏が行ったと記されている。

 アースブリンク氏はAFPの取材に対し「彼(カンプラード氏)は、(ナチ運動への参加は)若さゆえの過ちだったと弁明してきた。しかし前年8月にも、まだファシスト指導者に忠誠心をみせていた」「彼は私に、『エングタール氏は偉大な人物だ。命ある限り、この考えは変わらない』と語った」と述べ、取材の中で最大の驚きだったと話した。

 現在スイスで暮らすカンプラード氏はコメントを出していないが、イケアは公式ウェブサイトに「約70年前の問題で、既に何度も謝罪しており、イケアの事業とは無関係だ」「イングバル(カンプラード氏)は成人後の人生を、イケアと同社が支持する民主主義的価値観にささげている」との声明を発表した。

■ナチズムと関わりながらユダヤ人少年と親友に

 伝記には、第二次大戦勃発直前にオーストリアからスウェーデンに逃れてきたユダヤ人少年とカンプラード氏との交流も描かれている。当時ともに17~18歳だったユダヤ人のオットー少年とカンプラード氏は、すぐに親密な友人となったという。

 しかし、オットー少年の両親はアウシュビッツ(Auschwitz)で殺害されている。アースブリンク氏は、カンプラード氏のナチスとの関わりを蒸し返す気はなかったものの、同氏がユダヤ人少年と友情を育むかたわらで友人を苦しませるナチズムに関わることができた事実を不思議に思い、当時の心境を繰り返し尋ねた。

 ようやく得られた返答は、「何も矛盾しているとは思わない」というものだけだったという。

 一方、カンプラード氏とエングタール氏との交友関係は、戦後何年も続いた。伝記によればカンプラード氏は1950年、自身の結婚式にエングタール氏を招待し、交友関係にあることを誇りに思うと記していた。

 さらにアースブリンク氏は、過去に極右運動「新スウェーデン運動(New Swedish Movement)」に関わっていたと認めているカンプラード氏が、かつて極右政党「スウェーデン社会主義連合(SSS)」のメンバーでもあった事実を発見。カンプラード氏が17歳だった1943年、スウェーデン保安警察が同氏に関する情報を収集し「ナチ」と題されたファイルにまとめていたと記している。(c)AFP/Nina Larson