【8月27日 AFP】椅子に深く腰掛け、シェークスピア(Shakespeare)やオスカー・ワイルド(Oscar Wilde)、ヘンリック・イプセン(Henrik Ibsen)を読みながら、ワインを口に含む人たち。よく見れば彼女たちは、裸だ。

 裸と読書─「ネイキッド・ガールズ・リーディング(Naked Girls Reading)」と呼ばれるグループによる、こんな絶妙の組み合わせを実現した朗読会が月に1度、ニューヨーク(New York)で開催されている。最近行われた朗読会には30人ほどが集まった。その多くが若いカップルか、男性だ。

 マンハッタンの流行の先端、グリニッジ・ビレッジ(Greenwich Village)にある小さな部屋は、フランス貴婦人の私室を思わせる雰囲気を醸し出す。そこへ素肌にガウンをまとい、ハイヒールを履いた女性4人が現れた。小さなステージに置かれた大きなソファーに腰掛けると、来場者から拍手が上がる。それまで静かに新聞を読んでいた高齢の男性も、拍手で4人を迎えた。

「ようこそ!今宵、読み聞かせてくれるネイキッド・ガールを紹介します」─司会を務めるバーレスクダンサー、ナスティー・カナスタ(Nasty Canasta)があいさつした。

 この日のネイキッド・ガールは、ギャル・フライデー(Gal Friday)、サファイア・ジョーンズ(Sapphire Jones)、タンジー(Tansy)の3人。ガウンを脱ぐと、女性たちは文字通り、裸の読み手となった。彼女たちは、自らのパフォーマンスを「全裸文学」と呼ぶ。

 内容は昔ながらの朗読会だ。ワイルドの『真面目が肝心(The Importance of Being Earnest)』やイブセンの『人形の家(A Doll's House)』などの戯曲から、ウィットに富んだ魅惑的な一節が朗読される。

 読み手の女性たちは見事な女優でもある。ジョーンズがシェークスピアの一節を亡き祖母に捧げたとき、会場は彼女の高ぶった感情にのまれた。「私は朗読が好きだし、これが私のやり方よ。裸は快適だし、楽しいわ」と、カナスタは2時間にわたる朗読を終えて語った。

 最初は緊張したというフライデーも、今では裸になることは何でもないという。 聞く人(または見る人)も慣れるようだ。「視線が動くのを感じます。ガウンを脱ぐと、来場者は『裸だ!』と思うのですが、読み始めると彼らの視線が上がってきます」

■完ぺきな組み合わせ

 ネイキッド・ガール・リーディングは、2009年にシカゴ(Chicago)でミシェル・ラムーア(Michelle L'amour)によって始められた。この朗読会の多くの読み手と同様に、ラムーアはネオバーレスクと呼ばれる、20世紀初頭のミュージックホールのバーレスクに影響を受けた際どい舞台ショーを行う女性だ。

 活動を始めたきっかけをラムーアは話してくれた。「裸でソファーに座って読書していたのを夫に見つかったの。夫はそれを見てピンと来たんじゃないかしら。最初は2人して笑いながら、ネイキッド・ガール・ドットコムなんていうサイトを作ったらどうか、なんて言ってたんだけど、真面目にそれはいいアイデアかもしれないと思って、その日のうちにサイトを立ち上げたのよ」

 ラムーアはカナスタにコンタクトを取り、その年の10月、ネイキッド・リーディングはニューヨークに広まった。その後、米国全土の他、デンマークのコペンハーゲン(Copenhagen)や英ロンドン(London)など欧州でも開かれるようになった。

 この朗読会は人びとに文学を楽しんでもらうためのものだと、ラムーアは語る。「美しい女性を見ながら美しい文学を聞く。完ぺきな組み合わせだわ。観客が朗読に夢中になると私たちもうれしい」

 カナスタは、これから裸の読み手になろうという人たちには、ある事が求められると言う。「私が知ってる人のほとんどは、裸になって本を読んでみたいと言うわ。けど、どちらかだけなら気持ち良いという人は多いけど、両方とも好きという人は少ないわね」

 来場者は、満足して会場を後にした。「素晴らしかった。朗読が始まると、彼女たちが裸だということを忘れたわ」と32歳の女性は感想を語った。「とても力強かったし、朗読部分のチョイスも見事だったわ」(c)AFP/Mariano Andrade