【8月19日 AFP】西インド洋のセーシェルで17日、ハネムーン中の英国人男性が妻の目前でサメに襲われて死亡したが、ロシア極東沿岸のプリモライ(Primorye)でも17~18日、16歳の少年ら2人が相次いでサメに襲われ重傷を負った。カリブ海でも、発光性プランクトンで有名なプエルトリコのビエケス(Vieques)で遊泳中の女性がサメに襲われ、30センチもの噛み傷を負った。

 サメの襲撃件数は最近、世界各地で増加しているように見える。その原因について専門家らは、人間の側にあると指摘している。

■増加するサメ被害、ビーチ人気に一因

 世界各地のサメ被害データをまとめた米フロリダ大学(University of Florida)の「国際サメ被害目録(International Shark Attack FileISAF)」によると、2010年に起きたサメ襲撃事件は前年比25%増の79件(うち死亡6件)で、過去10年で最多だった。直近3年間の件数は増加の一途をたどっている。

 AFPのまとめによれば、今年はこれまでに6人が死亡、7人が負傷した。

 しかし海洋学者らは、サメが人を襲う理由に関する研究事例はほとんどないものの、可能性として挙げられる要因は全て、人間の活動に起因していると指摘する。

 最大かつ簡素な理由は、人間が移動する範囲や回数が増したことだ。航空運賃や旅行パックの格安化が進み、かつては全く人間が足を踏み入れなかった地域でも、海水浴やサーフィン、ダイビングなどが楽しめるようになった。

「つまり、サメの襲撃件数が増加したからといって、サメが人を襲う確率そのものが増えたとは限らないのだ。むしろ、人間が海で過ごす時間がどんどん長くなったことで、サメと接触する機会が増えたのが最大の原因だろう」と、ISAFは指摘している。

■温暖化や乱獲の影響も?

 一方、英国海洋生物学会(Marine Biological Association)のデービッド・ジャコビー(David Jacoby)氏は、サメの襲撃はそれぞれ地域的な要因によるため、十分な調査が行われてこなかった点にも着目する。

 裏付ける科学的なデータはないものの、魚類の乱獲や、地球温暖化による水温・海流の変化が、サメの行動に影響を及ぼしているとの見方もある。

 ジャコビー氏によると、サメはエサの多い場所を求めて移動するが、エサは海流に乗って移動するからだ。この習性はサメに限ったことではなく、大型海洋捕食生物に共通する。ただ、この理屈が、人間の活動が活発化したことと結びつけられるかどうかは、定かではないという。

 サメの祖先は4億年前までさかのぼることができ、魚類の中では極めて進化に成功した種といえる。人を襲うため悪者のレッテルを貼られるサメだが、容赦なくサメを攻撃してきたのは人間の側だ。国際自然保護連合(International Union for the Conservation of NatureIUCN)によると、フカヒレ人気などで乱獲され、サメ類の3分の1は絶滅の危機に瀕している。(c)AFP/Richard Ingham

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