【8月16日 AFP】東日本大震災の被災者に元気を出してもらおうと、米パイロットらが、今から80年前に史上初めて太平洋無着陸横断飛行を達成した「ミス・ビードル(Miss Veedol)」号のレプリカに乗り込み、被災地上空を飛行する。

 ミス・ビードル号は1931年、日本から米国本土までの8000キロの太平洋無着陸横断飛行を達成した。チャールズ・リンドバーグ(Charles Lindbergh)氏が大西洋単独無着陸横断飛行に成功した4年後のことだった。

 ビードル号が太平洋横断の旅に出た青森県三沢市では、今もなお、ミス・ビードル号の伝説が息づいている。三沢市には横断飛行の記念碑が建ち、子どもたちは学校で冒険飛行について学ぶ。

■18日に三沢市上空を飛行

 ミス・ビードル号のレプリカで飛行するのはスコット・カーター(Scott Carter)氏とジャック・ロデート(Jack Lodato)氏。三沢市上空を18日に飛ぶ。

 今回の記念飛行は震災前から計画されていたもので、震災を受けていったんは中止も検討された。だが、被災者たちを勇気づけたいと、飛行が決まった。

「わたしたちのメッセージは、勇気と日本の人々への尊敬の念だ」と、プロジェクトに参加するパイロットのデビッド・スタドラー(David Stadler)氏はAFPに語った。「挫折、困難、苦しみを経た今でも、日本の人たちは空を見上げている。つらい毎日の中で、空は考えや気持ちを高揚させてくれる」

 3月11日の東日本大震災は地震と津波による甚大な被害をもたらし、死者・行方不明者は2万人を超えた。

 三沢市は津波の直撃こそ受けなかったが、漁港を襲った巨大な波で2人が死亡した。また、市当局者によると、淋代(Sabishiro)海岸にあったミス・ビードルの木製の模型は、津波で破壊されてしまった。

 飛行するミス・ビードル号のレプリカは、1931年に同機が太平洋横断を終えて胴体着陸した米ワシントン(Washington)州ワナッチー(Wenatchee)で製造され、三沢市に貸し出されて県立三沢航空科学館(Misawa Aviation and Science Museum)で展示されている。同機は米国に帰還する前の9月に、スタドラー氏ら2人が乗り込んで、もう一度三沢市上空を飛ぶ予定だ。(c)AFP/Shingo Ito

【参考】
ミス・ビードル・フライト実行委員会
三沢市観光協会「トピックス ミス・ビードル号」