【7月29日 AFP】フラミンゴやシマウマで有名なケニアのリフトバレー(Rift Valley)で、山々にかかった霧が晴れるなか、頭にバスケットを載せた女性たちが行き交っている。ここはケニアで唯一のワイン用の商業ブドウ園。ブドウの収穫期が到来したのだ。

 カウボーイブーツにジーンズ姿、灰色の髪に無精ひげを生やしたマネージャー、ジェームズ・ファーカーソン(James Farquharson)氏は、収穫を監督するだけでなく、ブドウ園のことはたいてい任されている。

 バスケットのひとつに手を差し込み、収穫された大量のブドウを満足げに眺めたファーカーソン氏は、「ここは赤道直下で標高がとても高い。だからここのブドウの管理のやり方は、フランスはもちろん、南アフリカともだいぶ違う」と説明する。

 標高が1マイル(約1600メートル)を超えるこの農場は、掲げている目標も高い。ケニアで高品質のワインを醸造しようというのだ。

■実業家の息子、専門家に白羽の矢

 ワインのブランド名はレレシュワ(Leleshwa)。オリーブに似た地元の樹木からとった名前だ。カシューナッツやマカダミアナッツを販売している企業、ケニア・ナッツ(Kenya Nut)傘下のリフトバレー・ワイナリー(Rift Valley Winery)がこのワインを生産している。

 ファーカーソン氏は子ども時代をケニアとスコットランド、南アフリカで過ごし、そこでワイン醸造を学んだ。その後南アフリカの民間ワイン醸造会社が所有する広大な農園でマネージメントに携わった。仕事は刺激的だったが、ファーカーソン氏にとっては「オフィスワークが多すぎた」という。

 そこに突然、ケニアのビジネスマンからブドウ園の開発に協力してくれる専門家を探しているとの電子メールが入った。

「素晴らしい冒険のチャンスだと自分に言い聞かせた。これまでとは違うことをやってやろう、とね」と、ファーカーソン氏は振り返る。新しい冒険に挑もうと決めてから、もう3年が過ぎた。

 ケニア・ナッツのオーナー、ピウス・ヌグギ(Pius Ngugi)氏は、リフトバレーのナイバシャ湖(Lake Naivasha)の北にある農園で、1990年代からワイン醸造に取り組んでいた。だが、一定した品質のワインの醸造は不可能だと判断し、プロジェクトを棚上げしていた。

 再開させたのは、父のワイン製造への情熱をそばで見ていた息子のブグア・ヌグギ(Mbugua Ngugi)氏だった。ブグア氏は、アフリカを知り尽くしたブドウ栽培家とワイン醸造家が必要だと考えた。

■軽くて夏向きの味わい

 ケニアの首都ナイロビ(Nairobi)から北西に90キロ、赤道までわずか2000メートルという地理的条件とケニアの気候は、ファーカーソン氏にいくつもの難題をもたらした。だがファーカーソン氏は、標高3000メートルを超えるアンデス山脈など、世界には高地でワイン醸造が成功した例もあることを知っていた。

「フランスのように『偉大なワイン』を造るのは無理だろう。だが、ワイン醸造の基本に忠実に、シンプルに造ることを心がけている」(ファーカーソン氏)

 ナイロビ郊外の高級ショッピング街にあるレストラン「タルシマン(Talsiman)」のシェフ、マーカス・ミッチェル(Marcus Mitchell)氏は、「ワイン造りの観点から見れば、全てが正しく行われている」と評価する。「飲み口は軽く、夏向きで、ケニア産だ」

 価格も手ごろだ。フランスワインや、人気の南アフリカワイン、チリワインなどは輸入関税が販売価格を押し上げる。だが白ワインの「レレシュワ・ソーヴィニョン」は地元スーパーで540ケニア・シリング(約470円)ほどで、赤ワインは645ケニア・シリング。チリワインより10~15%安い。

 シェフのミッチェル氏は、「反応はとてもよい。お客さんたちに、一度試しに飲んでみようと思ってもらうようにするのが課題だ」と話し、南アフリカワインやチリワインとなら勝負になると言う。ケニアで急成長中の中流層にレレシュワ・ワインのファンが増えているそうだ。

 現在の出荷量は年間8万本。ワイナリーは、今後10年で300万本にまで増やすことを目指している。(c)AFP