【7月23日 AFP】(一部更新、写真追加)ノルウェーの首都オスロ(Oslo)中心部の首相府付近で22日、爆発が発生した。その数時間後にオスロ郊外の島で男が銃を乱射し、警察によると、爆発と乱射を合わせてこれまでに少なくとも87人が死亡した。死者はさらに増える可能性もあるという。
 
 警察によるとオスロ中心部の爆発では7人が死亡、数十人が負傷し、負傷者のうち9人は重傷を負った。首相府が入る建物などいくつかのビルは大きく損壊した。周囲の歩道には割れたガラスなどが散乱し、がれきからは煙が立ち上った。

 警察の報道官によると、爆発の直前に猛スピードで走る車が目撃されているが、爆発が自動車に仕掛けられた爆弾によるものかどうかは確認されていない。オスロでは、標的になりそうな施設の警備がいっせいに強化された。警察は現場付近を封鎖し、一時は市民に屋外に出ないよう呼びかけたが、この呼びかけはその後、解除された。

 オスロ中心部で爆発があった数時間後、連立与党・労働党の青年部が集会を開いていたオスロ近郊のウトヤ(Utoeya)島で警察官の制服を着た男が、集まっていた若者たちに向けて銃を乱射した。警察はこの銃撃で少なくとも80人が死亡したと発表した。この島では23日にイエンス・ストルテンベルグ(Jens Stoltenberg)首相が約560人の参加者を前に講演する予定だった。

 ストルテンベルグ首相は22日夜に記者会見し、誰が今回の攻撃の背後にいるのかを推測するには時期尚早だが、近いうちにその正体は明らかになるだろうと述べるとともに、攻撃をしかけたのが誰であろうと、ノルウェーとその民主主義を破壊することはできないと述べた。

 首相と共に記者会見したクヌート・ストールベルゲ(Knut Storberget)法務・警察相は、逮捕された容疑者の男(32)がノルウェー国籍であることを明らかにした。ノルウェーのメディアはこの男について、極右団体と関係があり、この男の名前で登録された2つの武器を所持していたと報じている。

 ノルウェーの公安機関は2月、イスラム系の過激派は同国にとって大きな脅威だと報告していた。ノルウェーはアフガニスタンに約500人の兵士を派遣している。リビアにもF16戦闘機を送っているが、リビアでの軍事作戦からは来月1日に撤退すると表明している。これまでノルウェー国内でイスラム過激派による攻撃は起きていないが、前年2月にイスラム教徒の男が攻撃を計画したとして逮捕されている。

 今回の事件を受けて国連(UN)、欧州連合(EU)、北大西洋条約機構(NATO)、米国など各国が事件を強く非難した。

■青年の集いが一転、戦争映画のような惨状に

 警察は、オスロ中心部での爆発と銃撃は関連があり、容疑者は爆発を起こしてから、警官の制服を着てフェリーに乗り込み、ウトヤ島へ移動したとみている。

 銃撃現場の目撃者によると、警官に変装した男は、オスロの爆発について捜査しに来たと言った後、若者たちにそばに寄るように指示してから、自動小銃を乱射し始めた。560人が参加していた夏のキャンプは一瞬にして恐怖でパニックになったという。逃げようと海へ入った人びとも撃たれた。

 左肩を撃たれた男性は病院で、豪ABCテレビに対し、現場はまるで「ナチスの映画」のようだったと語った。

「彼は至近距離にいる人たちを撃っていて、僕たちのほうに向かっても撃ち始めた。僕から10メートルくらいのところに立って、水の中にいる人たちを撃った。M16(米国の自動小銃)を持っていたけど、機関銃みたいに見えた。みんな殺されるぞって叫びながら、あの男の横顔を見たら、ナチスの映画か何かから抜け出して来たように見えた。それでみんなのことを撃ち始めたので、僕は横になって死んだふりをした。2メートルも離れていないところに立っていた。あの男の息が聞こえてきたし、銃が熱くなっているのも分かった。彼は1人1人、生きているかどうか蹴って確かめたり、銃を撃ったりしていた」(c)AFP/Pierre-Henry Deshayes