【7月22日 AFP】サハラ以南のアフリカではHIV感染予防策として男性の割礼(包皮切除)が推進されているが、ローマ(Rome)で開かれている国際エイズ会議で20日、こうした方法を後押しする新たな研究3本が発表された。

 包皮切除については、2006年にケニア、ウガンダ、南アフリカで行われた実験で、男性のHIV感染リスクが半分以下になることが分かった。このため国連合同エイズ計画(UNAIDS)などは、利点と危険性を吟味した上で、世界のHIV感染者3300万人の3分の2が暮らすサハラ以南の13か国で包皮切除推進キャンペーンを実施。2010年半ばまでに約17万5000人に包皮切除手術を行った。

 発表された1本目の研究は、南アフリカのオレンジファーム(Orange Farm)タウンシップで2007~10年に行われたもので、性欲が最も旺盛な15~24歳を中心に2万人以上に包皮切除を行ったところ、新たなHIV感染例が76%も減少したことが分かった。南ア・ウィットウォーターズランド大(University of the Witwatersrand)のデビッド・ルイス(David Lewis)氏は、「わずか40ユーロ(約4500円)、所要20分、そして生涯に一度きりの単純な外科的介入が、素晴らしい結果を生むことが示された」と、HIV感染予防としての包皮切除を絶賛した。

■男性の約90%「包皮切除後オルガスムに達しやすくなった」

 2本目の研究は、ウガンダのマケレレ大(University of Makerere)が、包皮切除から1年が経過した男性316人(平均年齢22歳)にセックスに関する聞き取り調査を行ったもの。このうち220人が「積極的にセックスをしている」と答え、そのうち4人に1人が「コンドームを使用している」と回答した。

 また、全体の87.7%が「包皮切除を受けてからオルガスムに達しやすくなった」と答え、92.3%が「性的快感が増した」と回答した。以上の結果は、包皮切除後の性生活への不安を払しょくするものだ。

 3本目の研究は、ケニア西部で包皮切除から6か月が経過した男性2207人に聞き取り調査を行ったもので、新たに包皮切除された男性であっても包皮切除されていない男性同等に安全なセックスを心がけていることが分かった。このことは、包皮切除を受けるとHIVに感染しないという過信が生まれてコンドームを使用しなくなる、といった懸念を和らげるものだ。

 1983年にエイズウイルスを発見し、2008年にノーベル生理学・医学賞を受賞したフランソワーズ・バレシヌシ(Francoise Barre-Sinoussi)氏は、包皮切除への過信は禁物だと強調した。「100%守ってくれる手段などない。包皮切除は複合的なアプローチの1つとして導入されるべきだ」

 また、包皮切除には、女性の感染リスクを低減してくれない、同性愛者同士のセックスには恐らく効果がない、などの欠点がある。(c)AFP/Richard Ingham