【7月21日 AFP】21日にスペースシャトル「アトランティス(Atlantis)」の帰還をもって30年の歴史に幕を閉じる米スペースシャトル計画。この「史上最も複雑でコストの高い航空機」は、宇宙に前哨基地を築く支えとなった一方で、過去30年間の米国の宇宙計画を低軌道上に縛り付けるものでもあった。

 引退目前のスペースシャトルに関するエピソードを拾ってみよう。

■コスト

 米航空宇宙局(NASA)の50年の歴史の中で最長プロジェクトとなったスペースシャトル計画には、30年間で計2080億ドル(約16兆5000億円)が投入された(2010年米ドル換算)。1回のミッションの打ち上げとその準備に必要なコストは、2010年のNASA発表によると約7億7500万ドル(約610億円)。

 ちなみに、米国人宇宙飛行士初の月面着陸を達成した1969年のアポロ計画のコストは1510億ドル(約12兆円)だった。

■初期計画

 スペースシャトル計画の正式名称は「宇宙輸送システム(Space Transportation SystemSTS)」。1972年、リチャード・ニクソン(Richard Nixon)大統領によって立ち上げられ、当初は訓練を積んだ宇宙飛行士だけでなく、民間人の宇宙飛行を目指していた。

■設計、定員

 スペースシャトルは上空160~640キロの地球低軌道の飛行用に設計されている。最高速度は時速2万8160キロ。

 宇宙船本体である軌道船(オービター)部分は全長約37メートル、全高約17メートル(着陸時)、翼幅約24メートル。貨物室の広さは18×4.5メートル。

 約250万個の可動パーツが使用され、複数の衛星を同時に軌道に運ぶことができるマニピュレーターアーム(ロボットアーム)が搭載されている。

 これまでのミッションにおける最多搭乗員数は8人(ミッションコードSTS-61AとSTS-71で、ロシアの宇宙ステーション「ミール(Mir)」から帰還した際)、最少搭乗員数はSTS-1~4までの最初の4回の試験飛行における2人。

■最初の打ち上げ

 1981年4月12日、米フロリダ(Florida)州にあるNASAのケネディ宇宙センター(Kennedy Space Center)、39A発射台から打ち上げられたスペースシャトル「コロンビア(Columbia)」。

■最後の打ち上げと帰還

 2011年7月8日、最初の打ち上げと同じ39A発射台から打ち上げられたスペースシャトル「アトランティス(Atlantis)」。国際宇宙ステーション(International Space StationISS)での13日間のミッションを終え、4人の米国人宇宙飛行士を乗せて7月21日に帰還する。

■名称

 それぞれのスペースシャトルの名称は、歴史上の有名な船にちなんでいる。

 宇宙に行くことはなかった試作機「エンタープライズ(Enterprise)」は、当初「コンスティテューション(憲法)」と名付けられる予定だった。しかし、テレビシリーズ『スター・トレック(Star Trek)』の大流行でファンが投書運動を行った結果、同番組に登場する宇宙探査船と同じ「エンタープライズ」と命名された。(c)AFP

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