【7月7日 AFP】過去40年の間に2回、東北地方の同業者に助けられたフランスのカキ養殖業者がこのほど、今度は自分たちが恩返しをする番だと立ち上がった。

 3月11日の東日本大震災で、東北地方沿岸部は町ごと破壊しつくされた。巨大津波に何もかもが押し流され、カキ養殖業も壊滅状態となった。

 6日、そんな三陸のカキ養殖業者たちへの支援として、筏や縄、作業着などカキ養殖に必要な装備7トン相当が成田空港に到着した。送り主は、仏西部ポワトゥー・シャラント(Poitou-Charentes)地域圏シャラント・マリティーム(Charente-Maritime)県とブルターニュ(Brittany)地域圏の同業者たち。これからトラックで三陸へ届けられる。

 支援プロジェクト名は「France o-kaeshi(フランスお返し)」作戦だ。

 現在、三陸地方では、カキの成長周期に間に合わせようと、7月中旬までの養殖再開を必死に目指している。新しい世代のカキを一から養殖するためには、貝殻を吊した縄に海に沈めて、カキの幼生が採苗するところから始めなければならない。食べられるまでに成長するには3年かかる。

「時間との戦いです」と、支援物資の配送を担う仏物流会社SDVの担当者は言った。

■仏養殖業界の窮地救った三陸のカキ

 フランスでは1970年と90年にカキの病気が蔓延し、養殖産業が危機に陥った。そのとき、カキの幼生を送って窮地を救ったのが、日本の養殖業者たちだった。

「フランスお返し作戦」をコーディネートするマイクロファイナンス(小口金融)グループ、プラネットファイナンスジャパン(PlaNet Finance Japan)のロベール・ヴェルディエ(Robert Verdier)氏はこう語る。「日本では、贈り物をもらったらお返しをする。だから今度はフランスがお返しをして日本を助ける番です」

 支援作戦を通じて日仏両方の業者は連携している。フランス側では、世界有数のカキ養殖具メーカー、SASミュロ(SAS Mulot)のパトリス・ミュロ(Patrice Mulot)社長がプロジェクトを引っ張る。日本側は齋藤浩昭(Hiroaki Saito)氏が立ち上げた「三陸牡蠣復興支援プロジェクト」が、養殖業者のニーズの聞き取りや、支援物資の配送を担っている。

■三陸は「カキの故郷」

 成田に着いた支援物資の第1陣は現在、気仙沼と宮古へ向かっており、10日までには第2陣3.6トンも到着する見込みだ。

 関係者は全員、このプロジェクトは成功することが必須だと理解している。「カキ保全のための故郷」とも言えるのが三陸海岸だからだ。

 ヴェルディエ氏いわく、「日本のカキの8割は三陸に由来しています。世界のどこかでカキの病気が流行し養殖業が打撃を受けたとき、救ってきたのは三陸地方なのです。フランスはそれを分かっています。(フランスでは)新たな病気が発生し、3月15日に、また三陸の稚貝を注文しようとしていたところでした。今度は歴史が逆転したのです」

(c)AFP/Gilles Campion