【7月5日 AFP】イタリアの環境保護団体「イタリア・ノストラ(Italia Nostra)」は4日、観光客が大挙して押しかけることにより、ベネチア(Venice)のラグーン(潟)が浸食されつつあると警鐘を鳴らした。不動産開発や、不十分な水上交通網も浸食に拍車をかけていると指摘している。

 建築家のクリスチアーノ・ガスパレット(Cristiano Gasparetto)氏によると、1988年の調査でベネチアの観光客の最大許容人数は1日当たり3万3000人と明記されたにもかかわらず、現在では1日当たり平均で5万9000人が訪れている。

 イタリア・ノストラによると、アドリア海(Adriatic Sea)の入り江であるベネチアでは、観光客の大量流入で水上交通が過密になり、海水と淡水が混ざり合った浅瀬が広がるラグーンの生態系が徐々に破壊されている。航行速度を上げたボートのプロペラがラグーンに流れ込んだ水底のシルト(沈泥)を巻き上げ、入り江というよりは湾に近づきつつあるという。

 ベネチアのラグーンは、幾重にも連なる砂州により、海水の行き来が妨げられている。一方で、ラグーンに流れ込む淡水の大部分はラグーンを経由して海に流出していた。ところが数世紀前から、淡水の大半が海に直接流れ出しているという。その結果、ラグーン内の水は今やアドリア海と同程度の塩分濃度になっている。

 イタリア・パドヴァ大(Padoa University)のルイジ・ダルパオス(Luigi D'Alpaos)教授(流体力学)は、ベネチアのラグーンは過去70年で平均して1メートル沈下したと分析した。

 イタリア・ノストラは、地元経済の低迷を招くことになるとしても、観光客数を大幅に制限すべきだと主張している。

 同団体は、カジノを擁するテッセラ・シティ(Tessera-City)を近郊に建設し、高速鉄道でベネチアと結ぶというベネチア当局の計画にも反対している。鉄道はラグーンの地下に長さ9キロのトンネルを掘る計画で、前述のガスパレット氏は、さらなる地盤沈下を招くと警告している。(c)AFP