【6月30日 MODE PRESS】今年で2回目を迎える堂島リバービエンナーレが7月23日から8月21日まで、大阪・堂島で開催される。今回は青森県立美術館チーフ・キュレーターの飯田高誉(Takayo Iida)をアーティスティックディレクターに迎え、アニッシュ・カプーア(Anish Kapoor)や隈研吾(Kengo Kuma)、杉本博司(Hiroshi Sugimoto)、森万里子(Mariko Mori)らをはじめとする一流のアーティストや建築家たちから構成される「エコソフィア(Ecosophia)」な世界を提案する。この言葉の意味するものとは、言葉が持つ本来の意味と展覧会を通して伝えたい想いを、空間構成を担当したスペースコンポーザー、谷川じゅんじ(Junji Tanigawa)氏が語った。

■インタビュー:谷川じゅんじ(スペースコンポーザー、JTQ代表取締役社長)

~時代を象徴する言葉なのか

 今回の展覧会では、今は亡きフランスの哲学者フェリックス・ガタリ(Felix Guattari)が提唱した『エコゾフィー(ecology+philosophy)の実践』を建築家とアーティストの役割において想定していくという企画内容です。コンセプトの「エコソフィア」という言葉には、エコの哲学を実践する惑星、という意味がこめられています。会場では、それらを地圏、水圏、気圏という領域で未来に向けての地球のビジョン、新たな自然観、世界像を指し示す空間として見せていきます。

 3月に起こった地震を今世の中全体、それぞれの人々が深く受け止めていると思いますが、これからの地球のあり方を、建築とアートというテーマのもとに自然環境、社会環境、人間の心理の3方向から考察するべく立ち上がったキュレーター、飯田氏の思考が非常に興味深い。今、世の中全体がものの価値観はもちろん、美意識に至るまで、これまでの経済的効率を優先させてきた消費社会に対して違和感を感じ始めています。3.11で起こった地震という経験を経て、人々の意識はさらに研ぎ澄まされている。あらたな価値観と審美眼によって、ものが語られる時代になりつつあると感じています。

~エコソフィアが意味するもの

 会場では、単純に作品を飾るのではなく、ユニット毎にアーティストと建築家の作品を展示しています。もともと非常に強いパワーを持ったアーティストたちですが、個々に成立するアーティストたちをあえて、一つの空間にまとめる。それによって、生まれるエネルギーを昇華させることで、想像を超えた“なにか”が生まれるのです。アニッシュ・カプーアさんをはじめ、森万里子さん、杉本博司さん、隈研吾さん、永山祐子(Yuko Nagayama)さん、坂本龍一(Ryuichi Sakamoto)さんらの作品が形を通り超えて、その場の空気となり、空間を織りなす。本来、展覧会などでは一人の作家の作品がフィーチャーされるけれど、今回は一緒にひとつの作品を作ってくださいというお題を飯田氏が投げかけています。これはつまり、一人の理想では社会は成り立たないということ。人は、自分の考え方を他人や環境、時間などとすりあわせながら、形にしていきますよね。これによって住み慣れた社会が成り立っている。そこにはいろんな想いを持った個が調整し、調和、共生している。今回は閉鎖された一つの空間(会場)にいれることで、塩梅やバランスが生まれてくる。非常に日本人的な感覚と感性が如実に表れた展覧会となっています。

~アートを肌で、空間で感じてほしい

 昔から「美術、アート」は、わかる人つまり玄人の領域とされてきて、敷居が高いと感じている人も多くいるでしょう。しかし、昨今アートも少しずつ身近になってきている。今回は、暮らしの中にその“アート”をはめこんでいく作業だと思っています。おのおのが伝えるメッセージを感じながら観ていく、体験型の展覧会となっています。個々のもの自体が非常にエネルギーが強い。それらが折り合いをつけたときに、どんな反応が起きるのか。それは実際に観て、空間に身を置いて是非とも肌で心で感じてほしいですね。【岩田奈那】

【参加アーティスト】
・アニッシュ・カプーア“PLACE/NO PLACE”
・地圏 楽園の象徴——都市、森、砂漠
アート: 石井七歩、新津保建秀、大庭大介、安部典子、齋藤雄介
建築: 磯崎新、藤村龍至、浅子佳英
・水圏 生命体の象徴——海、川、池
アート: 杉本博司、チームラボ、池田剛介、杏橋幹彦
建築: 原口啓+三木慶悟、柳原照弘、永山祐子
・気圏 天地創造と精神の象徴——大気、宇宙
アート: 森万里子、青山悟、マーティン・クリード
建築: 隈研吾、デビッド・アジャイ
・音楽:坂本龍一

【開催概要】
展覧会名:堂島リバービエンナーレ2011“ECOSOPHIA” ~アートと建築~
場所:堂島リバーフォーラム(大阪市福島区福島1-1-17)
会期:7月23日(土)~8月21日(日) 会期中無休
開館時間:11:00-20:00(入館19:30まで)
入場料:一般1,000円、高校・大学生700円、小学・中学生500円
主催:堂島リバーフォーラム
企画制作:堂島リバーフォーラム
・アーティスティック・ディレクター:飯田高誉
・アソシエート・ディレクター:生駒芳子
・アート・ディレクター:古平正義
・空間構成:JTQ 谷川じゅんじ
(c)MODE PRESS

【関連情報】
【連載:本物を観る】空間は記憶に残る、谷川じゅんじが語る「能作展-NOUSAKU_ism」
堂島リバービエンナーレ公式サイト
JTQ公式サイト