【6月15日 AFP】世界で初めての母親から娘への子宮移植手術が、来年にもスウェーデンで行われる見通しとなったと、西部イエーテボリ(Gothenburg)のシャルグレンスカ大学病院(Sahlgrenska University Hospital)の国際医学研究チームが14日、発表した。

 シャルグレンスカ大学病院の国際医学研究チームは、子宮移植の可能性を探るため、10年以上にわたって動物での実験を重ねてきた。その結果、人間の母から娘への移植でも合併症は起きない見通しがたったという。

 研究チームを率いるマッツ・ブレンストローム(Mats Braenstroem)氏は、子宮移植候補の女性10組について、手術が可能かどうかを調べているが、10組のほとんどは母と娘だと話した。

 サウジアラビアで2002年に他人同士の女性の間での子宮移植が行われた例はあるが、母親から娘への子宮移植は世界で初めてだ。ブレンストローム氏によると、移植手術は早ければ来年初めにも実施できる見込みだという。

■自分自身が育った子宮を移植されることに「抵抗ない」

 スウェーデン各紙も14日、移植手術を受けるため心身両面でのテストを受けている母娘のインタビューを相次いで掲載。大衆紙エクスプレッセン(Expressen)は、56歳の母親の子宮を移植される予定の25歳の女性が「絶対に不可能だと思っていたことが可能になる機会が与えられた」と喜ぶコメントを伝えた。生物学の教師だというこの女性は、「子宮も臓器の一種だし、(母親からの移植なので)遺伝子上の問題もない」と述べ、自分自身が育った子宮を移植されることに抵抗はなかったと語っている。

 この女性はアフトンブラデット(Aftonbladet)紙にも、「わたしはずっと子どもが好きだった。なのに、自分自身の子どもをもてないことが、この5年間は悲しくてたまらなかった」と語っている。

 女性の母親も同紙に対し、「もう自分に子宮は必要ないし、親ならば自分の子どもを助けるのは自然なこと」と話している。

 2002年のサウジアラビアでの子宮移植手術は、46歳の女性の子宮を血縁関係にない26歳の女性に移植したもの。この時は手術から14週間後、子宮を移植された女性が合併症を発症したため、子宮は取り除かなければならなかったが、医療チームは手術自体は成功だったと主張している。

 ブレンストローム氏によると、サウジアラビアでの手術は事前に実験を行わずに実施したものだったが、スウェーデンで行われる予定の移植手術については、動物での実験を十分に重ねてきたうえで実施するので、合併症の心配はないという。(c)AFP/Rita Devlin Marier