【6月7日 AFP】世界で最も自殺の多い国の1つとされる韓国では、受験のプレッシャーから自殺する十代の若者が毎年百人単位で出ている。

 特に大学受験で志望校に合格できないとの不安から、自殺する若者が多い。

 最近起きたショッキングな事例では、韓国南西部の木浦(Mokpo)で、16歳の少年が路上でガソリンをかぶって自らに火をつけるという出来事があった。遺書には、試験で良い成績が収められなかったことで、両親を悲しませたと思ったと記されていた。

 教育省の統計によると、学齢期の自殺者数は2003年には100人だったが、2009年には202人に増加した。それ以外にも、自殺未遂の若者が大勢いる。

 また、別の調査では、中高生の生徒のうち20%が自殺をしたくなったことがあると回答、成人の17.4%を上回った。

 韓国の若者たちは受験競争に勝ち、トップクラスの大学に入るために夜遅くまで勉強している。トップクラスの大学に入学することが、人生を有利にスタートさせる道だと考えている若者が多い。

 政府統計によると、高校高学年の平均睡眠時間はおよそ5時間。平均勉強時間は1日11時間だ。

 韓国・水原(Suwon)の高校に通うキムさんは、輪ゴムを手首にはめておき、眠くなるとそれで腕をパチンと叩いて眠気を覚ますのだと語る。彼女の友人たちも同じことをやっているという。

■受験低年齢化、子どもに負担

 ソウル(Seoul)の教育施設「Visang Education Research Centre」のPark Jae-Won所長は、現代の子どもたちは「極度の疲労、睡眠不足、抑うつ状態に常時置かれている」と語る。

「多くの親が、脳の発達を考えずに、幼いころからますます勉強させるようになっている。それによってうつ病や注意欠陥障害(ADD)が引き起こされていることもある」

 また、韓国の若者向けカウンセリング機関「Korea Youth Counseling Institute」の臨床心理学者、Bae Joo-Mi氏も、悩み相談の電話が年々増えていると語る。

 Bae氏は、「昔は受験競争は中学か高校から本格化したが、いまは小学校から始まる」と述べ、子どもたちが悩んだり抑うつ傾向になるのは当然だと指摘する。

「昔は電話をかけてきた人は『ゆううつだ』と言ったり『落ち込んでる』と言ったりしてた。でもいまの子は、『打ちのめされた。もう死にたい』と言う」

■うつ病診断やカウンセリング提供へ

 教育当局も、限定的ではあるとはいえ、問題の対策に乗り出した。

 ソウルの教育当局は前年11月、市内全校でうつ病診断を行い、危険性のある生徒にはカウンセリングを実施する計画を発表した。この計画は資金やカウンセラーの不足に直面しているが、それよりも当局が落胆したのは、子どもに精神疾患があると烙印(らくいん)を押されることを恐れ、親たちが診断を拒否したことだったという。

 一方で改善された面もある。当局によると、韓国全学校の38%に上る4300校で、現在は基本的なうつ病診断が提供されており、危険性のある生徒に対しては専門のカウンセラーを紹介している。2007年時点では、こういった措置は96校でしか提供されていなかった。(c)AFP/Jung Ha-Won