【6月6日 AFP】気候変動は、貧困にあえぐアジア・アフリカの広い地域で、生命線となる食用作物をおびやかしつつある。国際農業研究協議グループ(Consultative Group on International Agricultural ResearchCGIAR)が3日、このような報告書を発表した。
 
 報告書は、国連(UN)の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が出した2050年までの予測通りに地球の平均気温が上昇すると、作物の栽培可能期間が短くなり、気候も変動しやすくなることから、零細農業で成り立っている多くの地域で主食となる作物の栽培ができなくなると指摘する。これらの地域が慢性的な食糧不足に陥っている場合は致命的となり、3億5000万人以上がこうした「最悪の事態」に直面していると警鐘を鳴らしている。

■栽培作物を切り替える必要も

 報告書は、2050年までの気温上昇予測、農業人口密度、現在の食糧不足の状況という3種類のデータを世界地図に重ね合わせることで、食糧危機に見舞われる可能性が高い「ホットスポット」を特定した。
 
 予測では、西アフリカ、アフリカ南部、インドおよび中国の一部地域は、2050年までに、主要作物(コメ、トウモロコシ、マメなど)の作物の栽培可能期間の最高気温(平均)が30度を超える。主要作物の栽培可能期間が少なくとも5%短くなる地域や、雨量が前年比で21%以上変動する地域があることが分かった。栽培可能期間の一定以上の長さや一貫した気候パターンは、どちらも、作物の成長の上で欠かせない条件だ。
 
 気候変動による影響は、フランスの畜産農家など先進国でも見られたが、農家が基本的なニーズさえ満たせないアジア・アフリカの大半地域では、農畜産業の生産が人間の生存を直接左右していた。

 科学者らは現在、主要作物について温暖化にも耐えうる品種の開発に取り組んでいる。だが報告書は、一部地域では必要な栄養量を確保するために栽培作物自体を切り替える必要があるだろうと述べている。

 報告書を作成したある科学者は、次のように語った。「これらの問題を効率的に解消するための革新的なソリューションが待たれるが、それを生みだす機会は限られている。深刻な食糧問題、生計の問題を回避するために、適応に向けて今こそ大規模な努力が必要とされている」(c)AFP/ Marlowe Hood