【6月7日 AFP】米国のことしに入ってからの竜巻による死者数が2日、523人に上り、過去75年で最悪となった。

 しかも、竜巻シーズンはまだ終わっていない。

 暖かな夏が訪れれば竜巻の勢いは弱まるはずだが、竜巻のシーズンは7月いっぱい続く見通しだ。いまもなお、いつなんどき竜巻があってもおかしくない。その被害は予測不可能なだけでなく、想像を絶するものだ。

 犠牲者の大半は、2日間に発生した竜巻被害によるものだ。4月27日、米国5州にまたがって多数の竜巻が発生し、314人が死亡した。5月22日には、ミズーリ(Missouri)州ジョプリン(Joplin)を竜巻が直撃し、138人が死亡した。

 4月27日は、1950年の統計開始以来、最多の犠牲者を出した日となった。また5月22日の竜巻は、統計開始以来、最も多くの死者を出した単一の竜巻となった。2011年は早くも、年間犠牲者数が過去5番目に多い年となっている。

■風速90メートルの中の英雄

 近年、警報システムがめざましく向上したものの、9階建ての病院を基礎からなぎ倒し、レンガの建物をがれきにしてしまうほどの威力をもった竜巻を前にしては、警報システムもほとんど役立つことがなかった。

 ジョプリンでは、幅約1マイル(約1.6キロメートル)の竜巻が、風速約90メートルの突風を巻き起こし、市内約10キロの範囲を壊滅させた。

 バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領は5月29日、追悼式でこの竜巻被害を「国家的悲劇」と呼び、被災地で英雄的に行動した人びとのことを振り返った。

 その1人に、2児の父でピザ店店主のクリストファー・ルーカス(Christopher Lucas)さんがいた。

 ルーカスさんは、迫る竜巻を見て、大型冷凍室の中に避難するよう大勢の人びとを呼び寄せた。だが冷凍室は、中からは扉を閉めることができない構造になっている。

 そこでルーカスさんは、外側から扉を閉めた。自身はロープを探しだし、それにつかまって竜巻に備えた。

「クリストファーは、力尽きるまでロープにしがみついていた。やがて彼は、想像を絶する嵐の力に引っ張られて行った。彼の死は、冷凍室の中の数十人の命を救った」(バラク・オバマ米大統領)

 竜巻の被害は甚大だった。当局がすべての遺体の身元を確認し、避難住民が離ればなれになった家族や仲間と再会するまでに、実に10日がかかった。

 当局は、竜巻被災地の物理的な修復・復興だけでも数十億ドルがかかり、住民が通常の生活に戻れるようになるには数か月がかかるだろうと予測している。(c)AFP/Mira Oberman

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