【6月2日 AFP】洞くつに住んでいたアウストラピテクスなどの初期人類は、男性が終生生まれた場所の近辺にとどまるのに対し、女性は遠くから男性のもとに「嫁いでくる」傾向があったとする論文が、1日の英科学誌ネイチャー(Nature)に発表された。

 研究は、約200万年前にアフリカ南部に生息していた猿人のアウストラピテクスについて、謎に包まれていた社会構造の一端を垣間見せてくれる。

 米コロラド大学ボルダー校(University of Colorado at Boulder)のマット・スポンハイマー(Matt Sponheimer)教授(人類学)らの研究チームは、初期人類の行動パターンを探るため、240万~170万年前のアウストラピテクス8体、パラントロプス・ロブストス11体で歯の化石を分析した。

 歯のエナメル質に含まれる重金属の元素、ストロンチウムは、土壌や岩質により原子に微妙な差異が生まれるため、それを調べることでどのような土地に住んでいたかを推定できる。また、ストロンチウムは幼少時にエナメル質に侵入するため、生まれた場所に死ぬまでとどまっていたかを知る手掛かりになる。

 その結果、アウストラピテクスもパラントロプス・ロブストスも、森林地帯のサバンナに暮らしていたことが分かった。おそらく木の実や果実、草や植物の種を食べていたとみられる。
 
 また、30平方キロの範囲より離れた場所から移住してきたとみられるのは、女性では半数以上だったが、男性では10パーセントだけだった。言い換えれば、男性は生まれた場所から数キロ圏内で生活していたのに対し、女性は遠方から男性に嫁いでくるのが常だったとみられる。「女性の方が群れを離れる傾向があったようだ」と、論文の主筆、米コロラド大(University of Colorado)のサンディ・コープランド(Sandi Copeland)氏は話す。

 人類史において、女性が男性に嫁ぐ習慣は太古からあったことになる。霊長類では、チンパンジーとボノボは人間同様メスがオスのところに行くが、ゴリラを含む大半はオスがメスのところに行く習性がある。

 なお、今回の研究は、「初期人類は食べ物やねぐらを求めて長距離を移動する必要があったため、四足歩行から二足歩行に移行した」とする定説にも疑問を投げかけている。論文は、男性の移動が狩猟採集の活動範囲に限られていたとするならば、二足歩行への移行には別の要因があったとはずだと述べている。(c)AFP/Marlowe Hood