【6月1日 AFP】東京電力(TEPCO)福島第1原子力発電所の事故調査のために来日している国際原子力機関(IAEA)の調査団は1日、日本政府に提出した調査報告書の素案で、震災に対する日本の対応は「模範的」だと評価しながらも、津波が原発に及ぼす危険性の想定が過小評価されていたと指摘した。

 IAEAが派遣した調査団は米国、ロシア、中国、韓国などを含む12か国18人の専門家から構成されており、6月20~24日にウィーン(Vienna)で開かれるIAEAの閣僚級会合で提出する報告書を作成している。

 報告書の素案は「複数の場所で津波に関する危険性が過少評価されていた」とし、「原発設計者および事業者はあらゆる自然災害の危険性を的確に評価して備え、またそうした評価および評価方法自体も定期的に更新すべきだ」と指摘している。

 また今回の震災からの教訓として、原発は「極端な外的事象にも耐えられるよう設計されるべき」であり、「深刻な複合事故の際にも、基本的な安全機能を迅速に回復できるよう、容易に扱えて効果があり、しかも頑健な設備を用意すべきだ」と述べている。

 また規制当局の独立性の確保が不可欠だとも指摘している。これまで規制当局である原子力安全・保安院が、原発を積極的に推進してきた経済産業省の下にあることが批判されてきた。報告書は「原子力規制は、極端な外的事象に対処し、定期的な(安全基準)の見直しを図り、またあらゆる状況においてもIAEA安全基準(IAEA Safety Standards)に沿って、規制当局の独立性とその役割の明確性を確保すべきだ」と述べている。

 一方で来日調査中、日本政府や事業者、関係機関は「情報共有に関して非常にオープンだった」と述べ、また初期対応についても「非常に困難な状況下で、決意に満ちた献身的で勇気ある専門職員による現場での対応は模範的で、異例な状況だったことを考えれば、安全を確保するうえで最善のアプローチだった」と評価した。

 住民の避難など政府の長期的な対応についても「見事で、非常によく組織されていた」と記されている。さらに「公衆および作業員の被爆と健康に関する追跡プログラムや経過観察を行うことが有益だろう」と進言している。(c)AFP