【6月1日 AFP】ロシア当局は31日、プーチン前政権に批判的だったジャーナリストのアンナ・ポリトコフスカヤ(Anna Politkovskaya)さんが2006年に射殺された事件の容疑者として、国際指名手配されていたチェチェン人の男の身柄を拘束したと発表した。

 インタファクス(Interfax)通信が伝えたロシア連邦捜査委員会(Russian Investigative Committee)の発表によると、身柄を拘束されたのはポリトコフスカヤさん暗殺を実行したとして国際指名手配されていたチェチェン人のルスタム・マフムドフ(Rustam Makhmudov)容疑者(37)。30日夜、露南部チェチェン共和国(Chechnya)アチホイ・マルタン(Achkhoi-Martan)地区の両親宅にいたところを当局が拘束した。弁護士によると、容疑者の身柄は翌31日には取り調べのためモスクワ(Moscow)に移送される見込みだ。

 2006年10月7日に自宅だったモスクワのアパートの建物内で射殺されたポリトコフスカヤさんの事件からは5年が経っているが、これまで実行犯も暗殺計画の首謀者も特定できずにいる。だが、マフムドフ容疑者の逮捕で、ようやく真相解明が進展する可能性が出てきた。

 同事件では以前に、マフムドフ容疑者の兄弟2人と元警察官の計3人が逮捕・起訴されているが、2009年に証拠不十分で無罪となった。しかし最高裁はこの判決を破棄し、審理を差し戻したため現在、3人に対しても再捜査が行われている。

 体制に批判的な独立系紙ノーバヤ・ガゼータ(Novaya Gazeta)の記者だったポリトコフスカヤさんは生前、チェチェンに関する報道記事で国際的な評価を得ていた。同紙はウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領が、チェチェン紛争を利用して民主主義を抑圧していると批判していた。同紙編集長のドミトリー・ムラトフ氏は今回の逮捕によって「真実が明かされることを願う」とコメントした。

 一方、殺害されたポリトコフスカヤさんの息子のイリヤ(Ilya Politkovsky)さんは、たとえ実際に引き金を引いた実行犯としてマフムドフ容疑者が有罪になったとしても、暗殺を指示した黒幕は分からないままだろうと述べた。(c)AFP/Marina Lapenkova