【6月24日 AFP】アフリカ中西部ニジェール(Niger)は、トゥアレグ(Tuareg)族の武装闘争や貧困問題などで知られ、ファッションとは無縁に思える国 だ。

 そんなサハラ砂漠の端に位置するほこりっぽくも乾燥した国に、アフリカン・ファッションが持つ創造力を世界的に知らしめるため奮闘するデザイナー、 アルファディ(Alphadi)がいる。

■パリとニジェール

 アルファディ(本名:Sidahmed Seidnaly)は、現在53歳。トゥアレグ族として生まれた彼のファッションにおけるキャリアは30年にも及ぶ。非常に厳格なイスラム教徒で、宗教と深い関わりを持った貴族の家系出身だったため、若い頃は常に家族の反対に向き合わなければならなかった。

 苦難を乗り越え、1984年に自身のブランドを設立。その翌年1985年に、フランス・パリでオートクチュール・コレクションを発表し高い評価 を得た。以来、パリやニューヨーク、マリの首都バマコ(Bamako)などで次々とファッションショーを開催した。現在は、パリとニジェール間を行き 来しながら活動を続けている。

■伝統や自然からインスパイア

 首都ニアメ(Niamey)には、オフィスやアトリエ、ショップ、カフェなどが揃った建物がある。アトリエでは5人のデザイナーが熱心に服作り に取り組んでいる。アルファディの服は、このアトリエや、シリア、モロッコといった近隣諸国で製造されている。

 アルファディのデザインは、トゥアレグ族やハウサ(Hausa)族が何世紀にも渡り受け継いできたアフリカの手工芸や、サハラ砂漠やサバンナと いった広大な自然からインスパイアされている。軽やかなシルクやプリント柄のコットン、刺繍や織物を使ったドレスは、エレガントでとてもフェミニ ンだ。

■ファッションやアートで繁栄を

 しかし、ニジェールの政情不安から頻発するクーデターが、ビジネスに影を落とす。また、アーティストを過小評価する政府の姿勢もクリエー ションの妨げとなっている。
 
「アフリカは、なんでもできる。石油やダイヤモンド、ウランを売り出す理由はわかるが、ここには創造性に富んだジュエリーや刺しゅうを作っている芸術家たちがいます。しかし彼らは貧困に苦しんでいるのです」とアルファディ。

 現在は、アフリカにアートと仕事をもたらすチャンスを生み出すため「闘争」している最中だ。中でも重要なのは、「若者を支援すること」。二年に一度、「アフリカファッション国際フェスティバル(The International Festival of African FashionFIMA)」を主催することで、若いアフリカ人デザイナーたちが活躍する機会を設けている。アルファディは「地元のファッションやアートは、国の繁栄を促進するための手立てになるのです」と語った。(c)AFP/Sophie Mongalvy

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