【5月27日 MODE PRESS】富山県高岡の地に400年伝わる鋳物技術を用いた仏具製造から創業以来、茶道具や花器、インテリア商品などを通して、伝統工芸品である高岡銅器の魅力を今に伝える「能作(NOUSAKU)」が今、日本国内はもちろん、世界から注目されている。「日本で一番大切にしたい会社」に選ばれるなど、さまざまな分野からも熱い眼差しを受ける能作に時代は今、何を求めているのか?日本経済の先行きや自然災害による人々の意識変化に伴い、こんな世の中だからこそ、本物を求める姿勢と重要性について、スペースコンポーザーの谷川じゅんじ氏(Junji Tanigawa)が語った。

■美しい驚きは人生の喜び

 能作は、物作りに対する姿勢はもちろんのこと、次の世代に対して伝統工芸の匠の技を継承する姿勢がすばらしい。作っている品物もおもしろく、人も育っている、世界に評価される物作りを実践している数少ない企業であり、ブランドです。

 伝統は革新であり、革新こそが伝統。この言葉をよく職人さんたちと話しますが、能作のやっていることはまさに伝統を活かしつつもモダンなデザインを発信するそれです。今回5月31日から6月12日まで表参道GYREで展覧会「能作展-NOUSAKU_ism」を開催しますが、ここでは彼らが作り出す作品の型や完成するまでの行程を現物や写真を観ながら、そして音と空間を通して体感できます。

 たとえば、彼等が作り出す風鈴。見た目からおしゃれなのはわかってもらえるかとおもいますが、実は音色までデザインされている。その企画力と発想力、さらには具現化する力、つまりブランド力に秘密がある。そこには日本人特有の極めるという概念が垣間見られるのです。

 そもそも日本の匠とは、美しくシンプル、そしてプリミティブであること。美しい驚きは人生の喜びであると僕は日々考えていますが、良い驚きはひとを幸せな気持ちにしてくれる。能作が生み出すものや人は、まさにそれ。人から人へ渡ることで人の喜びを生み、連鎖を生む。そこには楽しい会話があり人とのコミュニケーションがある。ものに留まるだけではなく、そこから無限の力を発揮してくれる。

■なぜ今能作なのか?

 もちろん震災が起こったことによって多くの人々がいろいろなことを考えさせられたと思います。しかし、それ以前から我々日本人は、日本の風土や国土、文化についてあらためて考える節目なのかもしれません。本来日本は、資源の少ない国。一方で、技や人が生み出せるもので立国してきた国ともいえます。デザイン力、企画力、知恵をブランド化することにおいて優れている。そのなかで職人はペルソナになれる存在です。そんな素晴らしい職人たちを多くかかえ、育てている能作はある意味、日本の物作りの方向性を指し示している。自動車や家電などはその延長上にあるといってもいいのではないでしょうか?最先端の技術は、匠の世界の集大成そのものなのです。主張するばかりではなく、受け入れて協調することに長けている民族なのですから、異なるものを調和させながら生きていく技術、これこそが日本がこれから先、強めるべき点ではないでしょうか?単に工業品にとどまらない工芸品を生み出す、美意識を伴ったものづくりこそが今、立ち戻る原点かもしれませんね。

■能作展を通じて伝えたい本物とは?

 今回の展覧会では、物作りをしている日本人について知ってほしい、そして職人の美意識を観て感じてほしい。さらに、良いものはなぜ高いのか、その裏付けとなるものかもしれません。本物ってなんなの?ということをわかりやすく GYREを訪れた人に感じてもらえればうれしいですね。

 そもそも、手間をかけたものは、当然質があがる。見えるところだけを取り繕っていても、そのうちメッキははげる。みえないところからつみあげている手間は、どんな負荷やショックをあたえられても、本質がこわれないので、体力をもっているのです。手間をかけることの重要性をわかりやすくしたのが、能作展だと思っています。だれがみても、それがたとえ子供であろうと外国人であろうと、観てわかりやすいってことが大事。つまり、誰からみてもわかりやすいということは、若い世代からの視点とおなじだと思うんです。日本人としての明確な答えが今ないなかで、我々日本人はこれから何を大切にすべきか、その点において多少なりとも感じてもらえるモノがあればいいかな。

■空間は記憶に残る

 人間は常に、今自分がどこにいるのか現状確認をする生き物です。今回、展覧会のスタートと同じくしてGYRE館内の中央吹き抜け部分のモビールインスタレーションも能作の製品をつかって8月中旬まで行います。能作と出会い、音と出会い、空間に包み込まれる。この空間がこうやってうまれたというレシピを、体感してほしい。この風鈴をつくってくれたひとはこういうひとなんですということを伝えることによって、より多くのことを来た人がそれぞれに想いを馳せてくれるといいですね。自分が出会った情報を体験することでその感覚は、期待から印象へ、そして記憶へと還元されていきます。今回の展覧会では記憶に残すための方法として、普段と違う風を感じ、音を観てほしい。【岩田奈那】

【展覧会情報】
『能作展-NOUSAKU_ism』
2011年5月31日(火)‐6月12日(日) 
会場:EYE OF GYRE/GYRE3F 東京都渋谷区神宮前5‐10‐1 
問合せ:03-3498-6990 開催時間:11時~20時
(c)MODE PRESS

【関連情報】
能作公式サイト
GYRE公式サイト
JTQ公式サイト