【5月19日 AFP】国際通貨基金(IMF)専務理事として国際政治の舞台で名声を築き、つい先日まで次期フランス大統領選への立候補も取りざたされていたドミニク・ストロスカーン(Dominique Strauss-Kahn)容疑者(62)は、現在、米ニューヨーク(New York)・ライカーズ島(Rikers Island)にある悪名高い拘置施設の4メートル弱四方の独房で、自殺防止の監視付きで寝起きしている。

 ホテルの女性従業員に対する性的暴行と強姦未遂などの容疑で逮捕された同容疑者は、これまで数々の有名人を収容してきたライカーズ拘置所にとって設立以来最も高名な「VIP収容者」だ。それだけに施設側は万全の態勢を取ってストロスカーン容疑者を迎えた。

■通常の容疑者とは別格の扱い、完全隔離

 ニューヨーク矯正官組合トップのノーマン・シーブルック(Norman Seabrook)氏はAFPの取材に、ストロスカーン容疑者の扱いは「大きな挑戦」だと述べた。「これほど地位の高い収容者を受け入れるのは初めてだ。なんといっても、米国の主要同盟国の大統領候補なのだから」

 通常、公判前の容疑者は推定無罪の原則に従い、自分の衣服を着たり、私物を持ち込んだりすることなどが許可されている。しかし、ストロスカーン容疑者は違う。

 司法筋の関係者が匿名でAFPに語ったところによると、ストロスカーン容疑者は、通常は伝染病患者が隔離される西棟の監房に収容されている。なぜなら、この棟の監房は収容者をできるだけ隔離できるよう設計されており、ベッドのほかシャワーやトイレ、食事用テーブルなどが揃っているからだ。

■就寝中に起こして生存確認

 ここでストロスカーン容疑者はほぼ1人で生活している。「ほぼ」というのは、すぐそばで常に看守が見張っているからだ。

 衣服は、拘置所が支給するグレーのつなぎだけで、着慣れた高級スーツは着用を許されていない。何かを隠したりできないようにするためという。履物も、ひもがないゴム底の靴のみ。靴ひもがないのは、首つり自殺を防止するためだ。

 ストロスカーン容疑者は毎日1時間だけ外に出ることが認められているほか、室内でのランニングやテレビの視聴も――今回の自分のスキャンダルに関するニュースも含め――認められている。

 看守たちは24時間、ストロスカーン容疑者が就寝している間も、同容疑者が息をしているか確認している。もし見ただけで胸部が呼吸で上下しているか確認できないときは、「収容者を起こして生存を確認する」(シーブルック氏)という。

 こうした措置についてシーブルック氏は、「彼を危険にさらさないためだ。他の収容者と接触させず、名を上げたい者が彼を攻撃したりしないよう守っているのだ」と説明した。ストラスカーン容疑者は、正式に起訴されるか決まるまではここにとどまる。決定は早くとも20日以降になる見込み。(c)AFP/Sebastian Smith