【5月19日 AFP】米大統領候補だったジョン・エドワーズ(John Edwards)上院議員、イスラエルのモシェ・カツァブ(Moshe Katsav)前大統領、ゴルフ界のスーパースター、タイガー・ウッズ(Tiger Woods)・・・頂点を極めている時にセックス・スキャンダルによって破滅に直面した男たちは枚挙にいとまがない。そこに今週、国際通貨基金(IMF)の専務理事、ドミニク・ストロスカーン(Dominique Strauss-Kahn)容疑者が名を連ねた。

 彼らの多くが自分に掛けられた疑いを振り払おうとする。滞在していたニューヨークのホテルで、女性従業員に性的暴行を加えたとされるストロスカーン容疑者も、すべての容疑を否認している。

 しかし、セックス依存症患者を20年間にわたって診察してきた米ロサンゼルスの専門家、シャロン・オハラ(Sharon O'Hara)氏は、飽くなき性的欲求のために前後の見境をなくす男性の例は数多くあると言う。「ハリウッドの大物なのに周りが見えなくなってしまうといった人物はたくさんいる。反社会的行動に走ることもある。『欲しい物は何であれ、欲しい時に手に入れる。俺はそういう力を持っている』という心理だ。詰まるところすべては力と、それを使える権力に関する問題だ」

 性と権力の交わるところといえば、米カリフォルニア(California)州前知事のアーノルド・シュワルツェネッガー(Arnold Schwarzenegger)氏が17日、ケネディ家の一員マリア・シュライバー(Maria Shriver)さんと離婚した原因について、自分が元家政婦との間に隠し子をもうけたからだったと明かした。

■力を持つほど越えやすい一線

 セックス依存症患者と性犯罪者は、明らかに別の問題をもつグループだとオハラ氏は指摘する。依存症の場合、基本的に害を及ぼすのは自分に対してだ。しかし、時にそうした衝動が一線を越え、犯罪行為に至ることもあると同氏は警告する。例えば、のぞかれたくない人の入浴をのぞけば、それは性的犯罪行為だ。

 性的障害に関する専門家で、オハラ氏が勤務する「Sexual Recovery Institute」を15年前に創設したロバート・ワイス(Robert Weis)氏は、特に権力の頂点にある男性がこうした行為に走りやすいと指摘する。

「極度にストレスの多い仕事に就き、権力を持っている男性は、感情面でのバランスを必要としている。非常に高度な知的活動をしていることからくるある種の不死身感に、自己管理能力の欠如や絶え間ないプレッシャーが合わさると、結果として彼らは感情的にもろくなる。そして、それまで懸命に努力して達成したものを台無しにするところまで追い詰められることもある」

「権力を持つ男性が性的行動に走る」典型としてワイス氏が挙げたのは、ビル・クリントン(Bill Clinton)元米大統領やタイガー・ウッズだ。しかし専門家らによると、政治家が性犯罪で裁判沙汰になるケースはまれだと言う。犯罪行為に及ぶ手前で終わるか、被害者側が告訴しないかのいずれかの場合が多いからだ。

 だが、有罪となった例もある。観光相だった90年代に部下の女性を強姦したなどの罪に問われ、3月に禁錮7年を言い渡されたイスラエルのカツァブ前大統領。イタリアのシルビオ・ベルルスコーニ(Silvio Berlusconi)首相も現在、少女買春と職権乱用で起訴され裁判中だ。

 地位が高く、強大な権力を持つ男性は、特にセックス依存症に陥りやすいとも専門家らは言う。「1日16~18時間も働き、地元と遠く離れた世界の間を行き来し、しかも打ち明け話のできる相手をほとんど持たないような人物は、ものすごいストレスやプレッシャーに対処しなければならない」

「そうした人物の中毒的な性的行動の根本には、精神的な支えや親密な人間関係の欠如があり、そこに幼少期の感情的トラウマが見過ごされたまま結合して存在する」とワイス氏は言う。「彼らはリラックスすることや自己管理、人間関係を育むことなど、健康的な暮らしに欠かせないことをやり過ごしてしまっている」(c)AFP/Stephanie Griffith