【5月18日 AFP】中国の医療機関で、HIV感染者やエイズ患者が相次いで治療を断られている実態が、国際労働機関(International Labour OrganizationILO)が18日に発表した報告書で明らかになった。

 報告書は、ILOが中国で、100人以上のHIV/AIDS患者と、病院や医療関係者23人から聞き取り調査を行った結果をまとめたもの。

 調査に応じた北部・陝西(Shaanxi)省に住むHIV感染者の男性(37)は、胃にできた腫瘍の治療を受けるために、大きな苦労をしたと告白した。「どの病院でも、すぐに入院して手術が必要だと言われた。だが、HIV陽性であることを伝えると、どこでも入院を断られ、感染症専門の病院に行くように言われた」。HIV感染者の手術を行ったことを他の患者に知られると、病院の評判が悪くなるとの理由からだという。

 中国当局の統計では、人口13億の中国で、少なくとも74万人のHIV感染者やエイズ患者が存在するが、実際は当局の数字より、さらに多いとみられる。

 こうした人びとは、長い間、偏見や差別にさらされてきた。だが、最近では政府が公にHIV感染の予防を呼びかけていることもあり、HIV感染者らを取り巻く状況は改善しつつある。

 しかし、ILOが18日に発表した報告書によると、中国の医療機関におけるHIV感染者差別はなくなっていない。その主要因は2つある。

 多くの総合病院では、HIV陽性者というだけで患者を自動的に感染症専門の病院に押し付けている。だが、専門医療機関が受け入れるのは、HIV/AIDS治療が目的の患者のみで、HIV/AIDSと直接の関係がない症状の治療は行っていない。

 さらに、中国の病院の多くは利益を優先するため、病院の経営者らが、HIV感染者を治療すれば、これを知った人びとが具合が悪くなった時に他の病院に行ってしまうと恐れていると、報告書は指摘している。(c)AFP