【5月17日 AFP】グアテマラ北部のメキシコ国境に近いペテン(Peten)県の農場で、頭部を切断された27人の遺体が発見された。

 遺体が見つかったのは子ども3人と女性2人らを含む移民の農園労働者で、最年少は13歳だった。当局は16日までに15人の身元を確認した。当局はメキシコの麻薬密輸組織「セタス(Zetas)」が事件に関与しているとみて、捜査を進めている。

 事件があったのは、グアテマラの首都グアテマラ市(Guatemala City)の600キロ北にあるペテン県ラリベルタ(La Libertad)の「ロスココス(Los Cocos)」農場。生存者によると、14日夜に襲撃があった。

■農場経営者狙った犯行か

 カルロス・メノカル(Carlos Menocal)内相は16日、アサルトライフルで武装した男ら30~40人が農場を襲撃し、従業員らに農場経営者の居場所を聞いてまわっていたと語った。

 また、メノカル内相は、「セタスが農場経営者のオット・サルグエロ(Otto Salguero)氏を探していたとみている。今回の襲撃で、サルグエロ氏が麻薬密輸に関与していた可能性も出てきた」と語った。

 匿名を条件に病院のベッドでAFPの取材に応じた生存者(23)は、「洗い物をしているときに『動くな』と言われ、発砲し始めた。14日午後7時に殺害を始め、15日午前3時ごろに終えていた」と語った。襲撃者らはサルグエロ氏を探していたという。

「生きていることを神に感謝します。腹を刺されて死んだふりをして、それから隠れて、午前5時ごろに逃げ出した。そしたら人間の頭部がいっぱいあった」

 現在、グアテマラの捜査チーム4チームと警察の特殊部隊が、セタスが活動している一帯を捜査している。

■グアテマラ北部にセタスの影

 セタスはメキシコでの多くの大量殺害や誘拐、頭部切断などに関与したとされており、セタスに対する恐怖はメキシコ全土に広がっている。

 1990年代にメキシコの元エリート軍人が創設したセタスは、メキシコの麻薬密売組織「湾岸カルテル(Gulf Cartel)」の用心棒となった。現在は、メキシコ国内での麻薬密売組織同士の抗争のただなかにいる。

 またセタスは現在、グアテマラ北部の密売ルートを手中に収めようとしていると言われており、地方の農場を占拠して麻薬や武器の倉庫にしているとされている。

■殺人で1日に18人死亡

 グアテマラの殺人発生率は中南米でも高く、1日平均で18人が殺されている。さらに司法制度が崩壊し、犯罪の98%は処罰されることがないとされていることから、国連(UN)は2007年に「グアテマラ無処罰問題対策国際委員会(CICIG)」を設立している。

 だがグアテマラの状況はメキシコほどひどくはない。メキシコでは「麻薬戦争」による大量殺害が後を絶たず、政府が軍による麻薬組織の取り締まりを始めた2006年12月以降、約3万7000人が死亡している。(c)AFP/Edgar Calderon