【4月26日 AFP】ソマリア北部の乾ききった大地には、有名なラース・ゲール(Laas Geel)の洞窟(どうくつ)がある。中に入ると、太古の動物や人間が所狭しとせめぎ合うカラフルな壁画に迎えられる。約5000年前に描かれた、アフリカで最も古いとされる壁画だ。

 ハルゲイサ(Hargeisa)近郊に位置し、10の洞窟から成るラース・ゲールは、ソマリ語で「ラクダが水を飲む穴」を意味する。かつては2本の川の合流点に当たっていた。家畜を連れた牛飼いたちが天井や壁面に描いた絵は、赤、茶、白、オレンジの4色が使用され、当時の農村の生活を生き生きと今に伝える。

 壁画は2002年、フランスの考古学チームにより発見された。この洞窟は以前は村人たちから「悪魔が住んでいる」と恐れられ、誰も近寄ろうとしなかった。村人たちは危害が及ばないようにといけにえをささげていたものだ。ところが、壁画の価値が明らかになるにつれて略奪や違法な発掘の危機も高まり、現在は厳重に警備されている。

■壁画消滅の危機

 壁画からは、1991年にソマリランドとして北部が一方的に独立を宣言して以来、内戦や政情不安が続くこの地域の、あまり知られていない過去も垣間見える。華やかに彩られた牛や牛飼い、野生動物はこれが描かれた古代、この「アフリカの角(Horn of Africa)」一帯が緑に覆われ、野生動物の宝庫であったことを物語っている。

 しかし現在、ソマリアの大半は荒れ地となり、草も水も枯れ果てたラース・ゲール周辺にはもはや家畜も寄りつかない。人家もまばらだ。

 洞窟の保護に携わっているある考古学者は「緊急に対策を講じなければ、壁画は消滅してしまう」と危機感を語る。一部の壁画は、岩の劣化や天候の影響で既に消えてなくなろうとしている。この考古学者は現在、ソマリランド当局との共同作業で、地元住民に壁画保護の重要性を訴えたり、遺跡保護のための法律策定に協力するなど、壁画の保存にまい進している。(c)AFP/Otto Bakano