【4月20日 AFP】これまでに聞いたこともないほど徹底したエコカーが、もうすぐ米国中のホンダ(Honda Motor)のショールームに並ぶと注目されている。圧縮天然ガスを燃料とする天然ガス自動車「シビックGX(Civic GX)」だ。

 ホンダは密かにこのシビックGXで、もう10年も前から環境対策に関する数々の賞を受賞しているが最初は政府に、それから経済界のトップたちに、その後にテスト市場の限定された顧客へと、慎重にこの車を発表してきた。

 そのシビックGXの一般発売が全米でこの秋から始まる。軌を一にしてバラク・オバマ(Barack Obama)大統領は、2015年までにすべての政府公用車を代替燃料かハイブリッド車、もしくは電気自動車に代えることを含め、低燃費自動車の普及にいっそう力を入れている。また中東情勢の緊張で石油価格が高騰し、一方で米国内で大量の埋蔵が発見された天然ガスの価格が下落する中、大幅な燃料コスト減も消費者にとっては魅力となるだろう。

 しかしシビックGXがこれから参戦しようというエコカー市場は、米ゼネラル・モーターズ(GM)の「シボレー・ボルト(Chevy Volt)」や「日産リーフ(Nissan Leaf)」といった新型のプラグイン・ハイブリッド車や完全電気自動車が、メディアの注目を奪い合い、ますますコンパクトな車が燃費競争のしのぎを削る激戦地となっている。 

ホンダは米国進出初年度の目標として、それまでの倍に相当する4000台前後の売上げを掲げている。日産自動車(Nissan Motor)が掲げるリーフの年間売り上げ2万台と比べるとかなり控えめだ。

■天然ガスがはクリーンに燃焼できる燃料

 シビックGXは、圧縮天然ガスのタンク1個で403キロの走行が可能で、ガスの充てんは自宅あるいは公共の専用補給所で数分とかからずできる。

 シビックGXの環境影響評価を行った米国エネルギー効率経済協議会(American Council for an Energy-Efficient EconomyACEEE)は、米国市場において最もクリーンな車だと太鼓判を押した。これは天然ガスがクリーンに燃焼できる燃料だからだ。主成分はメタンで、ガソリンに比べて二酸化炭素排出量は3割、大気汚染の原因となる粒子状物質は7~9割カットできる。
 
 電気自動車は排気管からは何も出ないかもしれないが、米国の電力の45%は石炭を燃料とする火力発電でまかなわれているので、製品全体のライフサイクルで見る二酸化炭素排出量の指標、「カーボン・フットプリント」で見ると値が大きい上、バッテリーも環境負荷が非常に高い。

■天然ガス補充ステーションの拡充がか課題

 一方、完全電気自動車と同様、シビックGXのオーナーは代償を求められるだろう。「フィル(Phil)」と名づけられた比較的安い充てんユニットを買えば、自宅でガスの補充はできるが、自動車用の天然ガスの公共補給所は、広い全米にまだ870か所しかないのだから長距離移動は問題外だ。

 それでも環境保全技術を専門とする米コンサルタント会社パイクリサーチ(Pike Research)は、圧縮天然ガスのコストの魅力と環境的な利点が追い風となり、シビックGXの世界全体での売上げは年間9.1%ずつ増え、2016年には320万台を売り上げるだろうと予測している。(c)AFP/Mira Oberman