【4月14日 AFP】「日本は、時代遅れの学説に基づいた地震予知を即刻やめるべきだ」と警告する米地震学者による論文が13日、英科学誌「ネイチャー(Nature)」(電子版)に掲載された。

 論文の筆者は、東京大学(University of Tokyo)教授で地震学が専門のロバート・ゲラー(Robert Geller)氏。

 ゲラー教授は、政府主導の地震研究が東海地震の予知に固執しすぎたことが、3月11日に起きた東北地方太平洋沖地震の被害を大きくしたと指摘する。

 政府は数十年もの間、巨大地震が東海で起きるとの信念に基づき、東海・東南海・南海地震の発生を想定した対策を広く手がけてきた。

 だが、ゲラー教授は、日本の地震予知研究が根拠とする「地震特性」と「地震空白域」の学説は1960年代から70年代に発表されたもので、実証に基づいていない点を指摘。1975年以降、政府研究で「大地震が起きる」と予測された地域では目立った地震が観測されていないのに対し、1979年以降に日本で10人以上の死者を出した地震は全て、政府研究が「大地震の可能性は低い」と見なした地域で起きているという。

 それでも、政府は積極的に「東海地震」の予知研究を続けた結果、国民の間に「近い将来、マグニチュード(M)8.0級の東海地震が必ず起きる」との誤った認識が植えつけられてしまったと、ゲラー教授はみる。
 
■福島第1原発事故、「想定外」に疑問

 さらに、ゲラー教授は、研究者たちが過去の地震と津波の発生記録を検証していれば、3月11日の地震で壊滅的な津波被害を受けた東北沿岸が、過去にも数百年単位で巨大津波に襲われていることに気づいたはずだと指摘。これにより、地震の時期は予測できなくても、巨大地震の可能性を考慮した事前対策が福島第1原発でも可能となったはずだと主張した。

 また、気象庁の地震警報システムについても、1978年に制定された「大規模地震対策特別措置法」の概念や科学的見解を基本としていることから、東海地震しか想定していないと批判した。

 結論として、ゲラー教授は、「日本全土で大地震の可能性はある。特定の地域を想定した現行の予知システムや『大規模地震対策特別措置法』は廃止すべきだ」と主張し、「今こそ、地震は予知できるものではないと、国民に率直に知らせるべきだ」と訴えた。(c)AFP