【4月11日 AFP】旧ソ連の宇宙飛行士、ユーリ・ガガーリン(Yury Gagarin)が人類初の宇宙飛行に成功してから50年を迎える12日を前に、ロシア当局はガガーリンの一生に関する700ページ以上に及ぶ文書を公開した。

 ドミトリー・メドベージェフ(Dmitry Medvedev)大統領はモスクワ(Moscow)郊外にある宇宙管制センターを訪問し、ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)首相はウクライナでロシアやウクライナの宇宙飛行士らと会見する予定になっているなど、ロシア政府は国家的行事としてこの記念日を祝おうとしている。

 しかしロシア国民にとって前週末最大のニュースは、ガガーリンがロケットに乗り込んだ際に話した言葉が初めて明かされたことだ。

 ガガーリンの言葉といえば、宇宙船ボストーク(Vostok)が発射された際に発した「パイエハリ」(さあ、行こう)が有名だが、公開された文書にはその数分前、ガガーリンがボストークのカプセルに体を固定されながら、ロケット設計者のセルゲイ・コロリョフ(Sergei Korolyov)と交わした会話が含まれていた。ロシアのインターネットは今、この話題で盛り上がっている。

■「ソーセージで密造酒」とジョーク

 ニュースサイト「lifenews.ru」によると、ソ連ロケット計画の父と言われるコロリョフが最も心配したのは、人類の英雄になろうとしていたガガーリンが地球に戻ってきた後に食べる物が十分にあるかということだったようだ。打ち上げのカウントダウンが近づく中、コロリョフが無線でガガーリンに「フラップに夕食と夜食、朝食が入っているから」と告げると、ガガーリンは「了解」と返答。

 コロリョフがまた「ソーセージとキャンデー、紅茶に入れるジャムもあるから。63個あるから太るぞ!きょう(地球に)戻ってきたら、すぐに全部食べてしまえ」と続けると、ガガーリンは「ソーセージがあるっていうのは大事なところだ。これで密造酒が飲める」と返した。するとコロリョフは「ばか、全部録音されてるんだぞ」とさらに冗談を飛ばした。

「lifenews.ru」のサイトには、この会話が最初に書き取られた用紙の写真も掲載されている。また管制が打ち上げ前の最終点検を行っている間、ガガーリンは鼻歌や口笛などで自分を鼓舞していたと言う。

 しかし、すべてが順調にいったわけではなかった。管制が「調整するのを忘れた」と述べ、粘着テープをはがして部品を調整するようガガーリンに頼む場面や、コントロールパネルのライトの一つが点灯しないのでハッチの調整が必要だと言われる場面もあった。そのたびにガガーリンはすばやくこなし、そしてひとたびロケットが飛び立つと、目に入るものを逐一、嬉しそうに報告した。

 多くの歴史家が、ソ連当局は無重力状態で宇宙飛行士が失神する可能性をかなり懸念していたと指摘しているが、ガガーリンは「無重力という感覚は気持ちいい。何もかも泳いでいるみたいだ」と報告した。当時27歳だったガガーリンは108分間の人類初の宇宙飛行を終え、無事に地球に戻った。(c)AFP/Dmitry Zaks