【3月15日 AFP】大震災と巨大津波による二重の惨劇から立ち直るとき、日本の国際的な評価はいっそう高まるに違いない。日本という国の芯の強さに世界の称賛が向けられている。

 世界中のテレビには、がれきとなった家屋や車をあたかもおもちゃのように津波が押し流し、変わり果てた荒地に放心状態でさまよう被災者の姿が映し出されている。

 しかし、映像はもうひとつの側面も世界に伝えた。消息を絶った家族を探しながら、生活必需品が届くのを待ちながら、冷静さを失っていない日本人の姿だ。そこには略奪や暴動の素振りもない。

 半分空になった店の前でさえもきちんと並ぶ住民の姿に、英語圏のインターネット・コミュニティは、日本人は「冷静だ」と目を見張り、欧米諸国で同規模の地震が起きた場合にこうできるものだろうかという驚きが書き込まれている。

 米ハーバード大学(Harvard University)のジョセフ・ナイ(Joseph Nye)教授は、今回の地震が日本の「ソフトパワー」にとって良い方向に働くと語る。「ソフトパワー」とはナイ氏が提唱した言葉で、人を魅了する力による国家の目標達成という概念だ。

 ナイ氏はEメールによるAFPの取材に対し「悲劇は計り知れないが、日本が持つ非常に魅力的なある面を、この悲しい出来事が明らかにしている。それが日本の『ソフトパワー』を促進する」と述べた。「そうした面が共感を生み出すことに加え、このような災害に対して冷静に秩序正しく反応し、近代国家としてなしうる構えのできた安定した、礼儀正しい社会であることを示している」

 平和憲法を掲げる日本の外交政策は歴史的に、他国への援助を柱としてきた。しかし、今回の地震では巨額の復興費が見込まれるため、少なくとも部分的な支出の見直しを迫られるだろう。日本は世界に冠たる富裕国のひとつだが、援助団体の試算によると、前週起きたマグニチュード(M)9.0の巨大地震以降、米国1国だけですでに2200万ドル(約18億円)を超える寄付が集まっている。

 大きな悲劇を経験した時には、ほとんどすべての国から人としての共感が寄せられるが、そこから被災国の評価が高まるといったことはまれだ。

 2010年、大洪水に見舞われたパキスタンは米国その他の国々から支援を受けた。しかし、外国の個人寄付の集まりは鈍かった。その理由として援助団体らは、パキスタンのイメージの問題を挙げていた。2008年の中国、2010年のハイチの地震時にも両政府の対応に批判が集まった。

 今回の大震災によって、近年は低成長・高齢化社会・回転ドア内閣といった言葉で語られていた日本に対する言説が変わるとみる専門家もいる。

 米シンクタンク「戦略国際問題研究所(Center for Strategic and International StudiesCSIS)」のニコラス・セーチェーニ(Nicholas Szechenyi)副所長は「問題は、経済を革新し、復興を遂げるために必要とされることに、日本が対処できるかどうかだ。予測を立てるには時期尚早だが、遠くから眺めてこれまでのところ、日本人は危機の際の耐性の強さを示していると思う。この点が後日、日本という国をよく物語る点になると思う」

 米紙ウォールストリート・ジャーナル(Wall Street Journal)は社説でこう書いた。「300年に1度の大震災による大混乱の中で、日本人は冷静さを保ち、膨大な救助・復旧活動をまとめ、そして広く世界の称賛を集めている」

(c)AFP/Shaun Tandon

【写真特集】大地震発生から4日目、各地の様子