【3月10日 AFP】彼女は60歳を超えているが、いまだに子育て真っ最中で、外見も55年前から全く変わっていない。

 彼女は野生のコアホウドリだ。研究者らに「ウィズダム(知恵)」と名付けられた彼女は、最近、ハワイ(Hawaii)に近いミッドウェー環礁(Midway Atoll)で、卵を抱いている姿が確認された。別のアホウドリの卵ではなく、ウィズダムが生んだ卵だと考えられるという。現在はひながかえっており、6月か7月には巣立つ予定だ。

 実を言うと、研究者らは当初、その母鳥がウィズダムだとは気付かなかった。羽色が白く変化しておらず、目の周囲の張りも失われていなかったためだ。

 ミッドウェー環礁に生息するアホウドリの寿命は通常、30~40年とみられている。驚異的な長寿を誇るウィズダムは「これまでに約30羽のひなを世に送り出してきたと考えられる」と、米地質調査所(US Geological SurveyUSGS)パタクセント野生生物研究所(Patuxent Wildlife Research Center)のブルース・ピータージョン(Bruce Peterjohn)所長は語った。

 ウィズダムの存在が初めて確認されたのは、摩耗した個体識別用の足輪の交換が行われた2002年のこと。記録から、最初に標識を付けられたのは1956年で、著名な鳥類学者チャンドラー・ロビンス(Chandler Robbins)氏の手によるものだったことが分かり、この時点で北米のアホウドリとしては最高齢の52歳と推定された。

 以来、研究チームでは識別しやすいよう大文字で書かれた足輪を装着し、注意深く観察してきた。

 コアホウドリ(Laysan Albatross)は、国際自然保護連合(International Union for the Conservation of NatureIUCN)の「準絶滅危惧(きぐ)」種だ。かつては「絶滅危惧II類」に分類されていたが、個体数が回復したため、1段階引き下げられた。

 それにしても、ウィズダムはなぜ驚異的に長く若さを保てるのだろうか。ロビンス氏は、それはコアホウドリだけの秘密だと話した。「見た目が老けていくのは、人間だけだよ」(c)AFP/Kerry Sheridan