【3月2日 AFP】ロシア・モスクワ(Moscow)のボリショイ劇場(Bolshoi Theatre)が2005年から続く改修をまもなく終え、今年半ばに再開する見込みとなり、修復された由緒ある天井と金色のボックス席が1日、報道陣に公開された。

 ギリシャ神話のスカイブルーの背景に10人の女神が描かれた天井画は修復前には劣悪な状態だったが、9か月の修復作業を経て鮮やかな色彩を取り戻した。劇場全体と巨大なシャンデリアには計5キロを超えるモザイクゴールド(硫化第2スズ。金色の顔料)が使用された。

 工事によって2面式の回り舞台ができたが、外国人の出演者を時に怖がらせもする、客席へ向かってついた独特の傾斜は修復後も保持している。オーケストラ・ピットも135人を収容できる大きさに拡大され、同じく可動式になった他、音響もさらに改善された。

■この秋に公演再開へ

 2009年から工事の責任を負っている企業スムマ・キャピタル(Summa Capital)によると、修復作業の9割はすでに完了したという。夏ごろに再オープンし、10月か11月に公演が再開される予定だ。

 現在のクレムリン(Kremlin)に近い場所にボリショイ劇場が建てられたのは1856年。しかしその後、レーニン(Lenin)率いるボリシェビキ(Bolshevik)政権下で不適切な修復が重ねられ、ロシア文化の極致とも言うべきこの劇場本来の姿は大きく損なわれてしまった。

 今回の修復工事で閉鎖されていたボリショイ劇場は当初、2008年に再開する予定だった。しかし想定よりも損傷が激しかったため、オリジナルの姿に復元するには多くの作業が必要だった。

 さらに職権乱用による予算の浪費疑惑や、公金横領疑惑も浮上し、完成は数回にわたって延期された。大規模なボリショイ劇場修復事業はここ数年、モスクワ当局を悩ませる不動産業界スキャンダルの中心だった。

 当局者は、修復費用は少なくとも8億ドル(約660億円)に上るとしている。連邦会計検査官は2009年、コストが当初予算の16倍になった責任は請負業者にあると指摘していた。(c)AFP