【2月17日 AFP】コンサートツアーのため南アフリカを訪れたロックバンドU2のボーカル、ボノ(Bono)が、「ボーア人を殺せ(Kill the Boere)」と歌詞で呼びかける反アパルトヘイト(人種隔離政策)闘争の歌について、擁護しているとも受け取られかねない発言をし、南ア国内で激しい反発が起きている。

 問題の歌は、アパルトヘイト時代に歌われていたもので、すべてズールー語の歌詞の中に「ボーア人を殺せ」などのフレーズが含まれている。与党アフリカ民族会議(ANC)青年同盟のジュリアス・マレマ(Julius Malema)議長がいくつかの集会で歌って復活させたことで現在、政治的な議論の元となっている。

 ボーアとは、アパルトヘイト政策を推進したアフリカーナー(オランダ系移民)の言語であるアフリカーンス語で「農民」の意味だ。だが、歌をめぐってマレマ議長を訴えたアフリカーナーのロビー団体「アフリフォーラム(Afriforum)」は、歌詞のボーアという言葉には「白人、特にアフリカーナーを軽蔑する文脈が含まれている」と主張。差別的行為を煽動する「ヘイトスピーチ(憎悪に基づく言動)」として、歌を禁止することを求めている。

■「闘争歌は民族音楽のようなもの」

「360°」ツアーでヨハネスブルク(Johannesburg)入りしたボノは、13日のコンサートを前に同日付けの地元紙サンデー・タイムズ(Sunday Times)のインタビューで、「『ボーア人を殺せ』のような闘争歌にもそれに見合った場所がある」と話した。

「僕が子どものころ、おじさんが口すさんでいた歌を僕も歌っていた。アイルランド共和軍(IRA)の初期の闘争歌だった」。そう言ったボノは続けて、実際に歌を口ずさんだ。銃を持って立ち上がれ、といった内容だ。

「このような歌は、民族音楽と言ってもいいかもしれない。ある人々の闘争の物語であり、折りに触れて歌い継がれてきた事実を考えればね」 

 その一方でボノは、「ある種の音楽にはルールがある」と述べ、こうした闘争歌を歌う場合には時と場所をわきまえねばならないとくぎを刺した。

 このインタビューが掲載されるや否や、一連の発言がマレマ議長を擁護するものか、あるいはアフリフォーラムを支持する意図があるのかなど、国内のラジオやインターネットでは激しい議論が巻き起こった。ラジオには「ヘイトスピーチだ。われわれの歴史を全く理解していない」との憤りの声も寄せられた。

■アパルトヘイトの傷跡

 南アでは、アパルトヘイトが終焉した1994年以降、白人が所有する農場での人種差別に基づいた殺人事件が後を絶たない。前年には、極右白人至上主義団体「アフリカーナー抵抗運動(Afrikaans Resistance MovementAWB)」のユージン・テレブランシュ(Eugene Terreblanche)議長が自身の農場で黒人従業員に殺害される事件があったが、マレマ議長の歌が殺人をそそのかしたのだという批判も根強い。

 一方、発展途上国のための支援活動でノーベル平和賞(Nobel Peace Prize)の候補者にも挙げられているボノは、長年、南アの政治に関わってきた。

 1980年代のアパルトヘイト政権下には、「アパルトヘイトに立ち向かうアーティストたち(Artists United Against Apartheid)」に参加。アパルトヘイトに抗議する対南ア・ボイコットを世界中のアーティストに呼びかける歌をリリースし、売上金100万ドル以上を反アパルトヘイト闘争の活動資金として寄付した。(c)AFP

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