【1月30日 AFP】(一部更新)エジプト全土で続く反政府デモで退陣を要求されているホスニ・ムバラク(Hosni Mubarak)大統領(82)は29日、副大統領にオマル・スレイマン(Omar Suleiman)情報庁長官(75)を指名した。ムバラク氏が副大統領を置いたのは1981年の大統領就任後初めて。

 またムバラク大統領の指示で内閣は総辞職。大統領は政治・経済の改革を約束し、アハメド・シャフィク(Ahmed Shafiq)前民間航空相(69)を新首相に指名し組閣を命じたが、大統領の強権支配に対する抗議行動は収まらず5日目に突入した。
 
 治安当局および医療関係者らによると、28日には62人が死亡し、一連のデモで最も死者の多い日となった。また29日には33人が死亡し、デモが始まった25日以降、5日間での死者は少なくとも102人となった。負傷者は数千人と報じられている。

 目撃者によると29日は、デモの参加者が警察署を焼き払おうとしたカイロ南方140キロの都市ベニスエフ(Beni Sueif)で10人が死亡し、これまでの同地の死者は計22人となった。そのほかカイロで3人、パレスチナ自治区ガザ(Gaza)地区と境界を接するラファ(Rafah)で3人、スエズ運河西岸のイスマイリア(Ismailia)で5人が死亡した。

 即日、宣誓を行い就任したスレイマン副大統領は軍のキャリア組で、イスラエルとパレスチナの和平交渉に対するエジプトの関与を長年、情報庁長官として率いてきたほか、成功はしていないがパレスチナの内部抗争の仲介にも努めてきた。

 一方、シャフィク首相は野党陣営も含めたエジプトのエリート層の間で尊敬を集めている人物で、ムバラク大統領の後継者として名前を挙げられることも多い。

 しかし現在、エジプトに帰国し、反政府陣営の指導者として存在感を強めているモハメド・エルバラダイ(Mohamed ElBaradei)元国際原子力機関(IAEA)事務局長は、副大統領と新首相の指名だけでは十分でないと批判した。エルバラダイ氏はカタールの衛星テレビ局アルジャジーラ(Al-Jazeera)で、「ムバラク大統領とその政権には今すぐエジプトから出て行くべきだ。それがエジプトにとっても、大統領にとってもより良いことだろう」と述べた。

 97年から内相を務め、広く反感をもたれているハビブ・イブラヒム・アドリ(Habib Ibrahim El Adly)前内相が新内閣に入るかどうかも現地では注目されている。(c)AFP/Jailan Zayan