【1月30日 AFP】絶滅が危惧されているオランウータンのゲノム(全遺伝情報)を初めて解読したとする論文が、27日の英科学誌ネイチャー(Nature)に発表された。遺伝的な多様性が予想よりはるかに大きく、このことが種の存続に有利にはたらく可能性があるという。

 米ワシントン大(Washington University)などの国際研究チームは、スマトラ(Sumatra)島に住むメスのオランウータン「スージー(Susie)」のゲノム配列の全解読を行った。

 その結果、オランウータンのゲノムは、ヒトやヒトに最も近いチンパンジーとは異なり、過去1500万年の間にほとんど変化していないことがわかった。すべての類人猿は1400万~1600万年前に共通祖先から分かれたと考えられていることから、オランウータンは遺伝的にはこの共通祖先に極めて近いと考えられる。

 また、オランウータンのゲノムの遺伝的多様性はヒトよりも大きかった。ちなみに、ヒトとチンパンジーのゲノムは99%共通しているが、ヒトとオランウータンでは約97%が共通していることが確認された。

■スマトラ島のオランウータンの方が遺伝的に多様

 オランウータンはかつて東南アジアに広く分布していたが、現在はインドネシアのボルネオ(Borneo)島とスマトラ島だけに生息している。ボルネオ島の個体数は4万~5万頭、スマトラ島では森林破壊や狩猟により約7000頭にまで減少した。なお、それぞれは別種で、ボルネオオランウータン、スマトラオランウータンと称されるが、今回の研究で、2つは定説よりもっと後の約40万年前に分かれたことが推定された。

 研究チームは、各5頭でゲノムの概要を解読し、比較してみたところ、個体数がはるかに少ないスマトラオランウータンの方が、ボルネオオランウータンよりもDNAの多様性が大きかった。
 
 研究チームは、DNAの大きな多様性は、種の存続のチャンス拡大に貢献した可能性があると指摘している。(c)AFP/Marlowe Hood