【1月23日 AFP】モスクワ(Moscow)の第166小学校には、とても変わった生徒がいる。プラスチック製ロボットの「ステパン(Stepan)」は、白血病の少年の代わりに授業に出席しているのだ。

 ステパン・スピン(Stepan Supin)君(12)は、家でパソコンの前に座り、プラスチック製の友達の目と耳を借りて先生の話を聞いている。ステパン君は、2年前から闘病生活を続けている。免疫系が弱く、家から出ることはできない。

 ロボットにはウェブカメラ、マイク、スピーカーが取り付けられており、教室内で起きていることをリアルタイムでパソコンに中継する。ステパン君は、ロボットを通して担任のアラ・ゲバク(Alla Gevak)先生に質問したり、先生の質問に答えたりできる。

 ロボットは9月から出席し始めた。ロシア語と算数は先生の家庭訪問が必要だが、歴史、地理、英語、フランス語の授業はロボットを通じて受けている。

■「本当に教室にいるみたい」

 ステパン君は自由にロボットを動かせるので、実際に教室にいるようだと語る。「ロボットの速さは自分で変えられるし、頭を右や左に向けることもできる。本当に教室にいるみたいだよ」。

 ゲバク先生も同じ気持ちのようだ。「最初は奇妙な感じだったけれど、皆すぐに慣れました。休み時間になると、ステパン君は積極的に他の生徒たちと話しています。わたしたちも、彼がその場にいるように振る舞います」と語る。

 ステパン君の母親、ニーナ(Nina Supina)さんにとっては「存在感」がもっとも重要だという。「子どもたちは教室で遊んだり、騒いだり、交流したりします。普通の子の日常をステパンが経験できることが大切なんです」

■1台約25万円、障害者の在宅勤務などにも

 このロボットは2008年にモスクワにある研究所がデザインしたもので、インターネットを使って世界のどこからでも操作が可能。1台につき3000ドル(約25万円)のコストがかかるが、実験段階のためステパン君の学校に無償で提供されている。

 プロジェクトコーディネーターのヴィヤチェスラフ・クラフツォフ(Vyacheslav Kravtsov)さんは、「教育やヘルスケア、障害者の在宅勤務など、いろいろな用途があるでしょう」と語る。「この国には、助けを必要としている障害のある人がたくさんいるんです」

 ステパン君はロボットを非常にありがたがっているものの、将来的にはロボットのステパンに別れを告げ、他の子どもたちと同じように自分で学校に行く日が来るのを待ち望んでいる。(c)AFP/Elise Menand

【参考】YouTubeのAFPBB News公式チャンネルにこの動画あります