【1月21日 AFP】将棋をさす時、達人は素人とは異なる脳の部位を活用し、直観や目標探索力、パターン認識力を最大限に高めていることが分かったと、理化学研究所などの研究チームが20日の米科学誌サイエンス(Science)に発表した。

 理研脳科学総合研究センターの万小紅(Xiaohong Wan)氏らの研究チームは、MRI(磁気共鳴画像)を用いて、プロ棋士とアマチュア棋士の脳活動を比較。さまざまな盤面を見せ、次の一手を「じっくり」考えてもらったところ、プロ棋士の脳ではイメージの視覚化とエピソード記憶に関係する頭頂葉の「楔前部(けつぜんぶ)」が活性化したのに対し、アマチュア棋士の脳では何の変化も見られなかった。

 続いて、次の一手を「迅速に」考えてもらったところ、プロ棋士の脳では目標指向行動に関係している頭頂部の「尾状核」が活性化した。アマチュア棋士の脳はやはり変化はなかった。

 研究チームは、長年にわたって訓練を重ねたプロ棋士の脳では楔前部と尾状核をつなぐ回路ができており、盤面を瞬時に認識して最良の次の一手を選択できるのではないかと指摘。達人がよく口にする「直観」について、「次の一手に関するアイデアが即座に浮かび、意識的に考えずに自動で駒を動かすこと」と解釈し、「こうした直観的行動は達人によく見られる。したがってこの『直観』は、頻度が少なく突如として訪れるインスピレーションとは異なる」と述べている。(c)AFP