【1月19日 AFP】気候変動の研究においてしばしば観察されてきたペンギンだが、その翼に装着する翼帯(フリッパーバンド)がペンギンの生存率を下げ、繁殖にも悪影響を及ぼしているという論文を、フランスとノルウェーの研究チームが12日の英科学誌ネイチャー(Nature)に発表した。
 
 翼帯は金属製で、翼の根元にきつめに巻かれる。安上がりな個体識別法として広く使われてきた。識別タグは通常足に巻かれるが、ペンギンは体の構造上それが不可能だ。

 論文は、この翼帯はペンギンを泳ぎにくくしており、その結果餌探しに多大なエネルギーが費やされ、死に至る場合もあると主張する。

■翼帯が生存率とヒナの数を下げる

 研究チームは、南インド洋に浮かぶ仏領クロゼ諸島(Crozet archipelago)ポゼッション島(Possession Island)でオウサマペンギン100羽を捕獲した。100羽の皮下には研究のため、既に微小な電子タグが埋め込まれていた。チームは、うち50羽に翼帯を装着し、10年間にわたり観察した。

 すると、翼帯を装着したグループの生存率は、装着しなかったグループを16%下回り、産まれたヒナの数も39%少なかった。

 チームはさらに、アデリーペンギンで小規模な調査を実施した。アデリーペンギンは泳ぐとき、1秒間に3回翼で水をかくが、それを反映してか、翼帯を装着したグループはエネルギーを最大24%も浪費していた。

 また、翼帯を装着したペンギンが繁殖地に到達する所要日数は、装着しなかったペンギンより平均で16日も長かった。繁殖地に遅く到着すると、繁殖成功率の低下やヒナが遅く産まれて外敵に襲われやすくなる、などのリスクがあることが知られている。

 一部の研究団体は倫理的な観点から1980年代後半に翼帯の使用をやめているが、翼帯を使用する研究者はいまだに多いという。その理由は、「翼帯はペンギンに影響を及ぼさないから」「ペンギンは1年もすれば翼帯になれるから」といったものだという。(c)AFP