【1月10日 AFP】月に存在する水は、彗星(すいせい)が月面に衝突した際にもたらされたものが中心だとする研究が、英科学誌「ネイチャージオサイエンス(Nature Geoscience)」(電子版)に9日発表された。

 米ウェスリアン大学(Wesleyan University)などの天文物理学者からなる研究チームは、米航空宇宙局(NASA)がアポロ(Apollo)計画で採取した月の岩石標本の中から、アパタイトと呼ばれる水を好む鉱物を分析した。アパタイトに含まれる水の水素同位体比から、水は月内部のマントル、太陽風によって運ばれてきた水素原子、または彗星のいずれかからもたらされた可能性があると結論付けた。

 今回分析されたアパタイトの水素同位体比は、ヘールボップ(Hale-Bopp)彗星、百武(Hyakutake)彗星、ハレー(Halley)彗星のものに近いという。彗星の核は大量の氷を含んでいることから、太陽の周りを公転する氷の貯蔵庫と表現される。

 1970年代に提唱された「巨大衝突説」によると、月は約45億年前、地球が隕石(いんせき)または惑星に衝突した結果形成されたとされる。研究チームは、月に彗星から水がもたらされたのは、この巨大衝突の後ではないかとしている。

 月はこれまで、生命体や大気の存在しない乾燥した環境だと考えられてきたが、NASAが前年、月の北極付近に推定6億トンの氷があることを発見したと発表。長年の仮説が見直されるきっかけとなった。(c)AFP

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