【1月7日 AFP】軍事政権下のミャンマーに暮らす若者たちのファッションに変化が起きている。

 ミャンマーでは今でも学校や役所では伝統的衣装ロンジー(Longyi)の着用が義務になっている。ロンジーは、一枚の布を腰から足先まで巻きつけるコットンやシルク製の腰布で、複雑な柄と鮮やかな色合いが特徴だ。

 国内では男女問わず多くの人がロンジーを身に着けている。しかし、若い世代、とりわけ都会的な若い女性は、伝統的な服装を避け、型にはまらない 自由なスタイルを好む傾向がある。

■ネットで情報を収集

 急成長するミャンマーのファッションシーンを代表するChan Chan Clareは現在22歳のモデル兼歌手。ビヨンセ(Beyonce)やセリーヌ・ディオン(Celine Dion)に音楽面で影響されたというClareは、タイトなスパンコールのドレスを着てヤンゴン市内の待ち合わせ場所に現れた。店内に居合わせた人々の視線は彼女に注がれている。

 ミャンマーに住む「全ての女の子」がモデルの仕事に憧れている、とClareは語る。「ミニスカートを履きたがる女の子がますます増えています。私たちは日々進化し、新たなファッションを発見しているのです。インターネットで西洋やアジアのファッションを見て、それについてチャットしています」とClare。「この3年間で人々は着飾ることに自信を持ち始めました。ショートパンツを履いても、誰も気にしません。今ではもう問題にならないのです」

 女性同様に、男性のファッションも進化した。中でも人気なのはロック・スタイル。Clareは「若者はミャンマーのファッションが進化した、と理解しています。自由を知り、自分たちを信じ、たくさんの自信を手に入れました」と語る。

■「韓流」ブームの影響

 ファッションの変化は、政府機関が商業の中核都市であるヤンゴンからピンマナ近郊の行政首都への移転を開始した05年から起こり始めたという。 そのタイミングは「韓流」ブームと一致している。韓国のドラマや映画、Kポップ、ファッションはアジア同様ミャンマーでも浸透している。

 Clareは「韓国はとても素晴らしくスタイリッシュに見えます」と語る。韓流ファッションに必要なミニスカートやジャケット、ショーツ、レギ ンスはミャンマーでも簡単に手に入れることができる。

 韓国の人気は高く、ヤンゴンでは韓国人セレブのものまねコンテストが開催されるほどだ。ヤンゴンで5年前にブランドを立ち上げた34才のデザイナーMa May Myoは「問題は、ミャンマーの伝統的ファッションが韓流ファッションを越えられないことです」と語る。「若い女性は、軽やかで、人と違っていて、かわいい服を着たがるも
のです。自分のファッションを自慢したいと思っても、“ロンジー”では出来ないのです」

 Myoの顧客の要望はすべて韓流ファッションに影響されており、その流行は収まる気配がないという。「状況は大きく変化しました。私たちはインターネットで、デザイナーの動向や最近のトレンドなど、世界の出来事を知ることができます。以前のように、難しいことではありません」

■ファッションの新たな時代

 ミャンマーでは、伝統衣装促進のために、当局がデザイナーを支援しロンジーを現代風のスタイルに進化させるという試みが行われてきた。Myoは 「しかし、人々は聞く耳を持ちません。自分たちが着たいと思う衣服を身につけています。ミャンマーのファッションにとって、エキサイティングな時代がきたのです」と語る。

 タイを拠点に活動するアナリストのAung Naing Ooは、このような現状に対し「軍事政策が、このような他国の文化侵略を止めることはできないと思います。新世代の若者は、長年変化のない保守的な状況とは異なる変化を望んでいるのです」と分析した。(c)AFP/Rob Bryan

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