【12月30日 AFP】前年12月に発信器を取り付けた野生のカモ1羽が、この冬、1万2000キロの壮大な長旅を終えて香港(Hong Kong)に戻ってきた。その詳細が明らかになったことで、野鳥保護などに役立てられると専門家は期待を寄せている。

 WWF香港(WWF Hong Kong)は、野生のカモの移動経路および鳥インフルエンザと渡り鳥の関係性を調べるため、2009年12月、カモ23羽に太陽電池で動作する小型発信器を取り付けた。追跡にはグーグルアース(Google Earth)も活用された。

 そして、うち1羽のメスのオナガガモがクリスマスの今月25日ごろ、香港の米埔自然保護区(Mai Po Nature Reserve)に戻ってきた。

■渡りの経路が明らかに

 発信器の記録によると、カモは、今年2月25日に香港を離れ、中国東部と北東部、韓国沖の黄海(Yellow Sea)に立ち寄りながら、6月中旬にシベリアの北極圏へ到達し、3か月間滞在した。繁殖活動を行っていたとみられる。その後9月下旬に南下を始めた。

 平均時速50キロで飛行し、3日間で1700キロ移動した。ロシアと日本に立ち寄ったあと、今月18日に中国南部・広東(Guangdong)省を経て、25日ごろに香港に帰ってきた。総移動距離は往復約1万2000キロだった。

 WWF香港の専門家は、香港の英語日刊紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(South China Morning Post)に対し、鳥の渡りに関する貴重な情報が得られたと話した。例えば、鳥が移動中に直面するさまざまな危険や、土地開発による生息地の減少の恐れなどだ。

■途中でハンターに撃たれたカモも?

 なお、カモに装着された23個の発信器のうち、今回のカモ以外では2個が現在も作動している。英BBCの報道によると、うち1羽はロシアでハンターに撃たれて自宅に持ち帰られたとみられ、発信器はこのハンターの自宅と思われる場所を指し示している。もう1羽は、1か月以上前から北朝鮮にとどまっているもようだ。

 その他の発信器については、落下、故障、カモが天敵に襲われてしまったなどの可能性が考えられる。

 香港は、1997年に世界で初めて鳥インフルエンザがヒトに感染した場所だ。この時、6人が死亡している。(c)AFP