医師らは症状の観察の一環としてある時、クモやヘビといった一般的に気味悪がられる生き物ばかりのペットショップへ女性を連れて行った。女性は「ヘビは嫌いだ」と明言していたが、店へ入ったとたん、様々な種類のヘビがうごめく水槽に魅せられた様子だった。そして店員にヘビを抱いてみるかと聞かれると、何の抵抗もなく「自分の腕の間をすり抜けて動くヘビをまじまじと眺め、うろこをなでたり、舌に触れたり」して、はしゃぎながらヘビと戯れた。

 また同じショップでタランチュラに近づいたときには、まったく恐れずに触ろうとしたため、かまれないよう周囲の人が止めなければならなかった。

 この女性の20代の息子は、自分の母親が怖がったところを見たことがないという。子どものころに兄弟で遊んでいたとき、大きなヘビが近づいてきたが「母は驚きもせずに、すたすたと近づいていって、道路脇の草むらに放り投げた。信じられなかったよ」

 女性は30歳のときに強盗に襲われたこともある。体をつかまれ、喉にナイフをつきつけられたが、女性がまったく動じない様子を見てとると、強盗のほうから手を放した。女性はその後、普通に歩いて帰ったという。

 さらにお化け屋敷やホラービデオを使った実験でも女性はまったく恐怖を示さないどころか、ホラー映画をいたく気に入り、帰りにレンタルビデオ店で借りるためにタイトルをたずねるほどだった。

 小さい頃は暗闇や犬が怖かったという記憶があることから、疾患は生まれつきではないと考えられる。医師らは、この女性が「犯罪を犯したことはないが、逆に、強盗や銃暴力やドメスティック・バイオレンスといったさまざまな犯罪の被害者となってきた」とみている。