【12月20日 AFP】オーストラリア各地で過剰繁殖する猛毒性のカエル「オオヒキガエル」の駆除がすすめられている。そんな中、有害なオオヒキガエルをファッションに有効利用し、チャリティに役立てようという若者が現れた。

■カエルがオシャレな靴に

 オオヒキガエルは外来種で、コガネムシ駆除のため1930年代に意図的に輸入され、その後何百万匹にも増えた。野生動物を死にいたらしめ人間に怪我をさせるほどの猛毒を持ち、繁殖力も生命力も強い。そのため、これまでに車でひき殺したり、ゴルフクラブで打ち殺すなど、さまざまな駆除方法が試されてきた。

 27才のルパート・ノフス(Rupert Noffs)と30才のマット・ノフス(Matt Noffs)兄弟は、そんなオオヒキガエルに着目し、ファッショナブルなスニーカーブランド「ギデオン・シューズ(Gideon Shoes)」を立ち上げた。スニーカーには、オオヒキガエルとカンガルーの皮が使用されている。

 人々は忌むべき生物がスタイリッシュなアイテムに変わった姿をみて驚くという。「スニーカーを初めて目にした人は怖がることもあるけれど、その後で『とても美しいね』と言ってくれます」とルパート。

■カラフルなシューズは著名人にも好評
 
 耐久性に優れたオオヒキガエルの皮は、青やゴールド、赤、ピンク、黒など、美しいカラーに染色されている。「みんなには『誰かがヒキガエルにキスをして、ハンサムなスニーカーに変身させたんだ』と伝えています」とルパート。

 ニューヨークではシューズのコンセプトが受け入れられ、「ジャミロクワイ(Jamiroquai)」のジェイ・ケイ(Jay Kay)といった著名人もスニーカーを入手した。ルパートはヒキガエルがオーストラリア各地で繁殖した様に、スニーカーが消費者の間に浸透することを期待 している。

■祖父から受け継いだチャリティ精神

 ノフス兄弟の亡き祖父テッド・ノフス(Ted Noffs)は、1960年代にシドニーの繁華街キングスクロス(Kings Cross)に、路上生活者を保護する施設「ウェイサイド・チャペル(The Wayside Chapel)」を設立。地元でもよく知られる人物だった。

 兄弟もチャリティ精神を受け継ぎ、ルパートは服のリサイクルショップを経営。マット夫妻はシドニー西部に若者を支援する「ストリート・ユニバーシティー(Street University)」を開校した。「ストリート・ユニバーシティーは、子どもが本当の可能性や潜在能力を探すための場所。ここに来るほとんどの子どもたちは、何も無い状態で劣悪な環境からやってきますが、6か月後にはダ・ヴィンチ・コード(The Da Vinci Code)が読めるようになり、大学で学ぶ人もいます」とルパート。

 しかし、世界恐慌により、チャリティの活動資金不足に直面した。そうした中で、オオヒキガエル製のスニーカーのアイデアが浮かび、「兄弟で最高にクールなファッションブランドを立ち上げよう」という話になったのだという。

■オーストラリア製へのこだわり

 現在「ギデオン・シューズ」では20人以上の若者が働き、毎日20~30足のシューズが手作りで製造されている。ストリート・ユニバーシティー出身の若者を雇うこともある。

 賃金が安い中国でなくオーストラリアで製造しているため、シューズの価格は高く、カウレザーシューズが約160豪ドル(約1万3200)円、オオヒキガエルとカンガルーのシューズが約450豪ドル(約3万7200円)もする。ルパートは「劣悪な労働環境で製造される中国のシューズと比較すると、我々の価格は8倍です。しかし、働いている人々がしっかりと給料を受け取っているという安心感を得ることができるでしょう。それが、オー ストラリアで靴を製造すると決めた理由。もちろん、クオリティーも最高です」と語る。

 海外でブランド展開をする際、“オーストラリアらしい生物”のレザーを使用していることが売りになる。しかし、コアラやハリネズミなどの革をシューズに使用する予定は「絶対に無い」そうだ。(c)AFP/Madeleine Coorey

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