【12月14日 AFP】世界有数のコメ生産・消費国であるインドネシア。だが政府は、国民の健康と食糧の持続可能性の観点から、「コメ離れ」に向けた意欲的なキャンペーンを展開している。

 政府関係者のIndroyono Soesilo氏は、コメの年間生産量4000万トン、年間消費量3300万トンの同国において、国民をコメから脱却させることは「喫煙者にタバコをやめろと言うようなもの」と前置きした上で、次のように続けた。

「食を多様化させる必要がある。わが国は、トウモロコシ、サゴ、キャッサバ、サツマイモ、ジャガイモなど、66種類もの炭水化物が豊富な作物を産出している。例えば、1日3食のうち2食でコメをこれらの食材に置き換えることができる」

 インドネシアの人口は約2億4000万人と、世界で4番目に多い。国民1人あたりが消費するコメは年間100キロ以上。日本人や中国人より多い。1960年代は世界最大のコメ輸入国だったが、農業技術の向上と食糧安全保障のための諸政策により、今や完全自給国となっている。

 ただ、政府は、単一作物に頼りすぎることに危機感を抱いている。第一に、コメは気候変動の影響を受けやすい。今年は、ラニーニャ現象の影響で季節外れの大雨に見舞われた。都市化や温暖化による海面上昇に伴い耕作地が減ることも懸念される。

■食糧以上の意味を持つコメ

 だが、多くの貧しいインドネシア人にとって、コメは主食であるだけでなく、生活の糧であり、神からの賜り物でもある。 

 年に一度、豊作を祈念してコメの神様であるデウィ・スリを祝う「セレン・タウン」祭りが開かれる、ジャワ(Java)島中部・シググル(Cigugur)村の「王」であるDjati Kusumaさんは、「コメは仕事と食べ物を授けてくれる。生活そのものです」と話した。

 国際稲研究所(International Rice Research InstituteIRRI)とアジア・ソサエティー(Asia Society)は今年9月、世界の飢餓人口の65%が居住するアジア地域は、食糧安全保障の向上のため、コメの在庫を大幅に増やし管理を徹底させる必要があるとする報告書を発表している。(c)AFP/Jerome Rivet