【12月8日 AFP】子どもの多い家族への表彰を通じて大統領が子どもの象徴的後見人になる制度のあるドイツで、ネオナチを支持する夫婦の第7子にこの証明を発行することを自治体首長が拒否し、国内で議論を呼んでいる。

 大統領府は1日、旧東ドイツ領にあたる独北東部メクレンブルク・フォアポンメルン(Mecklenburg-Western Pomerania)州にある人口3300人の村、ラレンドルフ(Lalendorf)の村役場へ授賞に必要な書類を送付したと発表した。

 しかし急進左派政党、左派党(Die Linke)出身のラインハルト・クナーク(Reinhard Knaack)村長は2日、AFPの取材に対し、子どもの両親に賞の証明書を発行することは拒否するつもりだと述べた。その理由として、現地紙ターゲスツァイトゥング(Tageszeitung)に「私たちの地域では、極右過激派の拠点とならないよう多大な努力を払っており、この賞を渡すわけにはいかない。それはこの両親が極右主義者だからだ」と語った。

 クリスチャン・ウルフ(Christian Wulff)大統領が後見人になるはずの子どもは、ペトラ・ミュラー(Petra Mueller)さんとマルク・ミュラー(Marc Mueller)さん夫妻の7番目の子ども。夫のペトラさんは「優生学系の研究所」に勤務し、妻のマルクさんは極右系の女性グループに所属していると報じられている。

 大統領府は、「大統領が手続きを進めたのは、それが両親に関することではなく、新たに生まれた子どもに関することだからだ。子どもを民主的な環境のもとで育てることは、すべての人に求められることだ」と発表した。この賞では、両親に500ユーロ(約5万5000円)が贈られることにもなっている。

 ドイツでは第2次世界大戦中のナチス(Nazis)政権下、生涯に複数の子どもを生んだ女性に贈る「母親名誉十字章」という制度を設けていた。戦後の西ドイツではこの制度は廃止されたが、1949年には大統領が後見人になる新たな表彰賞が新設され、これまでに7万6440人が受賞した。

 一方、ラレンドルフ村では5日、当局にネオナチ系と目されている人物約10人が、クナーク村長宅の庭に侵入する事件も発生している。警察によると村長自身から通報があったが、村長は無事だった。現在は村長と合意の上で適切な対策が講じられており、実行した人物らは不法侵入の罪に問われている。(c)AFP